報告 2024年08月07日更新

第20回映像サロンレポート


ご報告が遅くなりましたが、512日(日)に第20回映像サロン「自分の生き様を貫く〜あるロックミュージシャンを撮り続けて〜」を開催しました。

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今回の発表者は佐藤真紀さん。学生時代にガールズロックバンドをやっていた真紀さんが、当時からの知り合いであるロックミュージシャンのササキ・ショーイチさんを5年がかりで追いかけたドキュメンタリー映画『ササキ・ショーイチ』を上映し、参加者でディスカッションを行いました。


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『ササキ・ショーイチ』は、ショーイチさんの音楽や生き様をあらゆる角度から描いたA面(46分)と、その音楽や人柄にもっと触れたい人のために作られたB面(39分)の二つの作品で構成されています。

このうち、A面はドキュメンタリー映画としての完成度が非常に高く、お二人の旧知の仲から垣間見えるショーイチさんの素顔がとても魅力的に映る作品になっていて、202312月には真紀さん主催による完成披露上映会も開催されています(会場はせんだいメディアテーク7階のシアターで1日に3回上映された)。今回はそれに特典のような形でB面をプラスしての上映となりました。


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そもそもの制作の経緯ですが、ガールズロックバンド解散後はショーイチさんとの交流も無くなったという真紀さん。その後映画音楽を作ることを夢見ながら、結婚・出産・子育て・親の介護と日々の生活に追われ、何もできないまま時間だけが過ぎ去っていったとこれまでを振り返ります。

そして50歳を過ぎてからたまたま参加した「みやぎシネマクラドル」をきっかけに、会員が運営に関わっていた「吉岡宿にしぴりかの映画祭」にも関わるようになり、同映画祭が主催した映像制作ワークショップに参加することになります。そこで何本かの短編ドキュメンタリーを制作し(音楽も自作)、そこで映像を作ることの楽しさに目覚めたそうです。

そんなタイミングで、何十年かぶりにショーイチさんが仙台でライブをやるということを知り、「彼はまだ音楽をやってたんだ!」と驚いたと真紀さんは語ります。そして実際にライブを観に行くと、とてもしっかりしたもので、そのフォトジェニックな姿を「映画にしたい!」と思ったとのこと。そうして2018年からショーイチさんを撮り始め、現在に至ります。


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こうして5年がかりで作られたA面は、ときに真紀さんとショーイチさんのマンツーマンの真剣勝負のような緊張感を漂わせながら、カメラを通して一人の男性の不器用さ、頑なさ、ナイーブさ、社会に対する疑問が、見る側に音楽とともにダイレクトに伝わる作品になっています。そして50歳を過ぎてなお、命を削ってひたむきに音楽と向き合い続けるショーイチさんの生き様に、参加者からは「一つ一つの言葉が胸に刺さった」「世の中のさまざまな人の励ましになる映画」といった感想が出ました。

一方、今回が初上映となるB面は、A面でショーイチさんに心を掴まれたからこそ肩の力を抜いて楽しめる作品になっていて、ストイックさが印象に残ったA面とはまた違った雰囲気でショーイチさんの人間性やユニークさを知ることができました。そのため、「あまりに砕け過ぎではないか」という真紀さんの心配をよそに、参加者からは「B面のほうが良かった」「真紀さんのセンスや実験精神がすごい」との感想も出ました。

また、AB面ともに「真紀さんだからこそ撮れた映像」「ほかの作家ではこういう雰囲気や距離感にはならない」「ショーイチさんの曲が本当に素晴らしい」といった感想も出ました。

中には「A面とB面を合わせて一つの長編映画にしたほうが良いのでは」との意見も出ましたが、それが単純に可能なことなのかが現時点では分からず、それを進める上では真紀さんが何故ショーイチさんに興味を持ったのか、動機の核の部分をさらに掘り下げ、作品のテーマをより深めるための工夫も必要になるのではと思います。

それを進めるべきかは真紀さんの判断になりますが、いずれにしても、現在のAB面を2つ並べた形で十分魅力的な作品になっているので、参加者からは「この形でも劇場公開を目指してほしいし、関係者だけでなく、よりたくさんの人にショーイチさんとショーイチさんの音楽に出会ってほしい」といった声が多数寄せられました。


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真紀さん曰く、ショーイチさんは撮影を快く受け入れてくれたとのことですが、「好きに撮って」「君が撮りたいんでしょ?」という感じで、決して共同制作のような形で内容に積極的に関与してきたわけではないとのこと。それが、作り手のあざとさや演出のいやらしさを感じさせず、作品の良さに現れていると多くの参加者も評価しています。

そして完成した作品については、ショーイチさんが思っていた以上に周りの反応が良くてご本人も不思議に思っていたとのこと。しかしドキュメンタリーにおいては、こうした周囲の好意的な感想というのがとても大事で、それが主人公本人が作品を肯定的に受け止め、主体的に広める原動力ともなっていきます。

中には作品を観て「ショーイチさんに会いたい」という人や「CDが欲しい」という人もいたようですが、こうした作品を通しての出会いが、主人公の人生に何かプラスのものをもたらせたら、作り手冥利に尽きると思います。今後も上映を通して良い出会いが生まれることを、みやぎシネマクラドル一同もお祈りします。

以上、さまざまな意見・感想が出ましたが、被写体ご本人が納得できる映像を作ることの難しさや、長い時間をかけて、コミュニケーションを重ねてそこに辿り着くことの大切さについて、それぞれの作り手が大いに学んだ回となりました。真紀さん、この度は本当にお疲れさまでした。これからもがんばってください!

(文責:みやぎシネマクラドル)

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