報告 2024年02月03日更新

第19回映像サロンレポート


2023123日(日)に、みやぎシネマクラドル第19回映像サロン「ひとの死を見つめる~『あなたのおみとり』上映会~」を開催しました。

01(サムネイル).JPG

 

今回の発表者は、仙台市出身で東京都在住の村上浩康さん。まだ完成前の、ご自身の父親が在宅介護で息を引き取るまでの過程を記録したドキュメンタリー映画『あなたのおみとり』を上映し、参加者でディスカッションを行いました。

 

02.JPG
村上浩康さん

 

村上さんのお父さんは4年前に胆管癌が見つかり、余命宣告を受け、本人の希望で最後は自宅で過ごすことを選択したそうです。村上さんは度々東京と実家を行き来するも、楽しいことばかりではなく、段々億劫に感じることも。

 

そのときに、自分が積極的に看取りに参加するにはどうしたら良いかを考え、「撮影しよう」と思い立ったとのことでした。

 

こうして身内という立場を活用して撮られた映像は、他人では絶対に撮れないであろう距離感から家族に肉薄しつつも、冷静さを保ちながら現実を淡々と描き、現代では身内であってもなかなか立ち会うことのできない人の命が消えてゆく過程を克明に描いていました。

03.JPG04.JPG

 

また、テーマよりも先に場所の設定から撮影を始めるという、村上さん独自の映画制作のスタイルが今回も発揮され、自宅の一室という小さな世界の中で展開される介護職や医療職などさまざまな人とのやりとりから、在宅介護や老々介護といったさまざまな問題が見えてきました。

 

上映を終えて、「親父はわりと苦しまずきれいに死んでいった。だから映画にもできたし、観ている人も苦しくならないのではないか。お袋もたくさんの人に観てほしいと言っていた。」と語る村上さん。

05.JPG

 

参加者の中には、実際に在宅介護をしている人や家族を看取った人などもいて、「家族が心の準備ができていたからこその清々しさがある」「自分の旦那の看取りを思い返しながら観た」「親父に会えたようで嬉しかった」「こういう映像が残るのは羨ましい」といった声が寄せられました。

 

また、村上さんの過去作を観ている人からは、「今までの作品と違って村上さん自身の感情が出ていて見応えがある。父・母・監督の3つの視点が上手く表現できていた。」といった感想が寄せられ、はじめて観た方も、「今の人たちも、若いうちからこうした貴重な機会に触れてほしいし、介護従事者や医療従事者の教材として活用できるのではないか。」と映画の意義を熱く語ってくださいました。

06.JPG07.JPG

08.JPG09.JPG

 

一方で、撮影開始のタイミング的な問題から、お母さんの心情はたくさん撮れているのに対し、お父さんの心情が撮れていないこともあって、「お父さんがどこを見ていたか、何を見ていたかをどう表現するか」「もっと父を語るエピソードを入れても良いのでは?」といった意見も寄せられました。現時点ですでに完成に近い状態でしたが、村上さんにとっても具体的に役立つアドバイスが得られたようでした。

 

家族にカメラを向けたことについて、村上さんは、「父は撮ることに何も言わなかった。勝手に受け入れてくれたのだと思った。だったら死にざまをしっかり撮ろうと思った。最後に親に甘えて撮らせてもらった。」と語ります。

 

この映画が、死を描きながらも、それ以上に生を、「今日を生きる」ことを描いた映画として、これから多くの人に届くようクラドルとしても引き続きサポートしていければと思います。

 

村上さん、この度はお疲れさまでした。完成・公開とがんばってください!

10.JPG

 

文責:みやぎシネマクラドル


x facebook Youtube