コラム 2023年04月28日更新

【結婚の定義コラム・その1】LGBTの私がフィクトセクシュアルに注目する4つの理由


 みなさまこんにちは。MEMEと申します。宮城県仙台市在住の独り者セクマイです。
 突然ですがみなさまは「フィクトセクシュアル」(Fセク)という言葉をご存じしょうか。架空のキャラクターを性愛の対象とするセクシュアリティのことで、たとえば2018年に初音ミクと結婚式を挙げたことで有名な近藤顕彦さんも当事者のひとりです。近年Fセクをカミングアウトする人が増加しており、キャラとの婚姻届を受け付ける民間サービスや、キャラとの結婚式を積極的に受け入れる結婚式場も出てきています。
 私自身はFセクの当事者ではありません。でも私は今、Fセクに大変強い関心を持っています。今回はその理由をお伝えしたいと思います。

 

【理由1 私自身フィクションに支えられてきたから】
 私はFセクの当事者ではありませんが、小さいころから本の虫で、たくさんの漫画や小説に支えられ、育ててもらってきました。これまで出会ってきたキャラたちは本当に大切な存在です。なのでFセクの人たちにはすごくシンパシーを抱いています。

 

【理由2 LGBT界隈でのFセク差別が目につくから】
 同性婚法制化を推している人、LGBT人権運動に関わっている人が「結婚の自由をすべての人に」などと高らかにうたいながら「キャラ婚?そんなのと一緒にしないで!」的なことを平然と発言しているのを見かけることがあり、そのたびに悲しくなります。
 セクマイ差別するな!と言いながら、平気で別属性のセクマイを差別する。おかしな話です。
 私は一応、LGBTの一員です。こんな状況にあって、LGBT当事者がコミュニティの内部から「Fセク差別はおかしい」と声を上げていくこと、コミュニティの自浄作用を示していくことが、今、非常に重要だと感じています。

 

【理由3 科学技術の進歩でFセクがさらに増えると見込まれるから】
 昨今のAIやロボット、バーチャルリアリティの進歩は目覚ましいものがあります。鉄腕アトムやドラえもんとまではいかずとも、キャラが人々の暮らしのパートナーになってくれる時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
 そうなれば、キャラに強い親愛の情を抱く人も、さらに増えていくのではないでしょうか。

 

【理由4 生身の人間同士のマッチングが難しくなっているから】
 生涯未婚率急上昇、独身者だらけの現代日本。恋愛性愛や結婚に関して多様性や自由意思をキッチリ尊重すれば、格差がどんどん拡大して余る人が続出するのは自明の理です。需要と供給がピッタリとマッチするわけがありません。
 もはや「生身の人間同士のマッチング」のみを前提とすることには無理があるのではないでしょうか。キャラ婚やキャラとの暮らしを人生のひとつの選択肢としてポジティブに提示していくことで、救われる人も多くいるのではないでしょうか。

 

 

 近藤さんはじめ、バッシングにも負けずキャラとの幸せな日常を発信してくれているFセク当事者の方々は、ある意味で未来を先取りしているのではないかと思います。
 キャラと共に暮らす人々はこれからどんどん増えるはず。そうなった時、たとえば社会のルールやマナーはどうあるべきなのか。著作権や商標権などFセク特有の課題もあります。ごく一部の特殊な人だけの問題ではなく、社会全体でとりくむテーマとして、今から考えていくことが重要なのではないでしょうか。
 近藤さんは奥様の「大きなミクさん」(写真参照)を車椅子に乗せて、徐々に遠出のデートにもチャレンジされているようです。近藤さんがおじいちゃんになるころには、逆にミクさんが近藤さんの車椅子を押してくれるのかもしれません。そんなほのぼのした風景が当たり前になっている社会を、私はぼんやりと夢見ています。


近藤さんちの大きなミクさん (2).JPG近藤さんちの大きなミクさん (1).JPG














【文と写真:MEME1980年生まれ、宮城県出身・在住。アロマンティック(恋愛感情なし)でバイセクシュアル(女も男も性的対象)でノンモノガミー(11の性愛関係にとらわれない)でFtX(女として産まれ、性自認が女でも男でもない)。実は底辺ボカロPでもある。

 

 


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