報告 2012年08月19日更新

第1回くろい音楽室「ミミヲカスベキ?地元仙台の音楽家たち?」レポート


【開催概要】

日時:2012 年 8 月 19 日(日)15:00-17:00(開場14:30)
会場:せんだいメディアテーク b1 準備室
(参考:https://www.smt.jp/projects/kuroi/2012/08/-2-20.html


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ミミヲカスベキ?地元仙台の音楽家たち?

地元仙台にまつわるくろい音楽家たちをPICK UP!実に仙台の音楽シーンは類い稀なくらい音楽家で溢れています。特に一般的には露出の少ない"Club/Black"Musicシーンにおいて、世界で活躍する音楽人を輩出しており、仙台はある種一つのブランドになっているとも言われています。そんな彼らの音楽に改めて耳を傾けてみませんか?

世代を超えて音楽の話をできる場所はなかなかありません。互いの感覚を認識することで、新たな考えや動きが生まれるのではないか?という思いをきっかけに、くろい音楽室の開催は決まりました。 第1回は「ミミヲカスベキ?地元仙台の音楽家たち?」をテーマとし、当日は会場の中央にパソコンとマイクをいくつか設置し、地元仙台にまつわるおすすめの音楽を愛好家および参加者が紹介する形式をとりました。 〈ファシリテーター: 濱田  アシスタント: 高橋、鈴木  音楽愛好家: 千葉、バップ〉

曲紹介: DJ MITSU THE BEATS /Promise In Love

濱田 「これは仙台を代表するビートメイカーDJ MITSU THE BEATS。ちなみにDJ MITSU THE BEATS、知ってる方ってどれくらいいらっしゃいますか?」
*DJとは:ディスコやクラブなどで音楽を選曲し、ミキシングやスクラッチなどの様々な技法を用いて演奏・パフォーマンスを行う人

来場者の多くの手があがりましたが、一方で知らない人も居るようでした。地元仙台のアーティストなだけあり、参加者からはPVが逆再生で制作された、という作成秘話なども飛び出しました。 それからDJ MITSU THE BEATSの所属するGAGLE(ガグル)、そしてモンキーマジックの話題へ。 DJ MITSU THE BEATS がリミックスをしたモンキーマジック"アイシテル"や原曲なども合わせて紹介されました。彼らは震災時、一緒に度々ボランティアを行っていた経緯もあったそうです。 ** GAGLEの話題が続きます

曲紹介: GAGLE /屍を越えてfeat.cro-magnon

千葉 「元レコード屋のJ&Bにいました、千葉と申します。先ほど紹介していただいた若い女性が二十歳。私はもう還暦過ぎてますけども。このGAGLEの屍を超えてっていう曲ですねぇ~。もともとヒップホップ自体はもうメロディーがないから好きでもなんでもなくて。ところがこの曲を、聞いたんですねぇ。まぁ凄いこれ当然、詩もメロディーも最高で。ヒップホップってうるさいだけじゃないと......というのはね、これを聞いて...思ったんですねぇ。それ以来、GAGLEっていうのが......もう大好きで。もうこの連中には、12インチ(レコード)出してくれと。何度も何度も言ったんですが......GAGLEのこう~ メロディーのある曲でベスト盤を出してほしいなぁ~と思っているのですけども、これも全然出す気はないらしいんで。この~ GAGLEっていうのは仙台でね、当然ず~~っとやっているわけで、これがまた凄い泣かしていただいてるわけですけど。どうなんですかねえ~?GAGLEっていうのは、もともとはジャジーヒップホップで出てきたもんなんですか? J&Bの泉店でミツくん(DJ MITSU THE BEATS)がしょっちゅう来てたんですよ。で、そのジャズをいつも見てて、ケニードリューないか?とか、ギターの...ないかとか。沢山尋ねてきたんですね。ところが俺自身はジャズは全然好きじゃなくて。それどころか、申し訳ないですけどジャズを聴く人間が......」
千葉 「でもこうやってGAGLEが仙台にいてくれるっていうね。凄い嬉しいんですよね、やっぱり。この先もこういう曲を作って欲しいなぁと思って。ビートメイカーなんだけど、ミツくんって俺にとっては最高のメロディーメイカーなんですよねぇ」
濱田 「もう最高の褒め言葉じゃないすか!」
千葉 「なんかね...なんだろ。夕焼け?みたいなことを凄い感じるっていう...。大好きなGAGLEなんです。みなさんもチャンスがあったら是非。」
高橋 「ちなみに千葉さんは今年お幾つになられたんですか?」
千葉 「え~と、61歳ですかねぇ」
高橋 「61歳!」
千葉 「だからGAGLEがなかったらヒップホップって聞かないですよね、おそらくね」
濱田 「あ~」
千葉 「もともとロックなんで。しかも1960年代だから、もうビートルズとリアルタイムなんで。だから、ヒップホップとパンクっていうのはメロディーがないから大嫌いだったんですけど。まぁでもこうやってメロディーもちゃんとやれるんだっていうのが、GAGLEに教えてもらって、すごい良かったなぁっていうねぇ~」
高橋 「すみません、(話の途中、会場の女性へインタビュー)今年お幾つになられますか?」
女性 「65歳......」
高橋 「65歳!はぁ~61歳の千葉さんより年上の先輩の方が...ヒップホップとか聴かれますか?」
女性 「ラジオをいつもかけっぱなしなので聴いてますよ」
高橋 「ありがとうございます。どうですか?実際聴かれてみて。若者向けだなぁ~とか、聴き辛いなってのはありますか?」
女性 「全然ないです」
高橋 「だからこういう場にいらっしゃるんでしょうね!ありがとうございます!」

世代間の興味深いお話を伺うことができました

曲紹介: ジャンピングクロウ

バップ 「これはニューオリンズのブラスバンドですね。セカンドラインというビートで、いわゆる電気がいらない人達ですね。ちんどんやみたいなもんですね。これは仙台の文化横丁で毎月第3日曜日に15時からと、16時からライブをやってますんで。毎月やってて非常に楽しいです」
高橋 「ということは、文横(仙台文化横丁)だけで活動しているんですか?」
バップ 「いや、お祭りとかの、例えば河原町の夏祭りですとか、今年も8月の頭にありましたけど、あとはゴールデンウィークの台原森林公園の東日本放送のフリーマーケットとか。そういう所で演奏したりしてます。練り歩くのが本来なんですけど、文化横丁、私有地なんですけど一番町の方まで練り歩ったら、うるさいって怒られたらしくてですね(笑)。 もうちょっと理解を深めてほしいなと。こういう楽しいことにはみんな賛成してほしいっていう」

話は仙台のアーティストから海外のアーティストへと移ります。 参加者のみなさんから思い入れのある曲を紹介していただききました。そんななか、DJの方からDJ目線での話も聞くことができました

曲紹介: Gang Starr Ft Jadakiss / Rite Where U Stand

DJ SIF 「どーも、はじめまして。仙台でDJやってるシフと申します。よろしくお願いします。僕はヒップホップのラインでは、ベタなGangstarrのこの曲を選ばさせていただきました。というのもこの曲、実は今でも結構プレイでかけるんですけども、僕の原点になっている曲でして。僕は出身が気仙沼なんですけども、その当時、僕のまわりでDJ とかやってる人はまったくいなくてですね。最初、僕はエミネムきっかけでヒップホップに入ったんですけど、たまたま輸入盤でこのGangstarrって人達を見つけて。オーナーズってアルバムだったんですが、それが人生で2枚目に買ったヒップホップのアルバムで。今でもいちばんかける曲かなって思います。で、このトラック自体が凄く使い易くて、今、結構色々ハウスとか、ブレイクビーツとかエレクトロニカとかかけたりするんですけど、その曲と合わせても凄く使い易い曲で。頭のキックの部分をカットインで入れてもかっこいいですし、あえてローカットせずに、フェードインアウトしても凄い使い易い曲なんで。Gangstarrの中でもなかなか、皆さんかけない曲なんで僕のおすすめとして一曲紹介させていただきました。以上です、ありがとうございます」
濱田 「いーね!シフ君のDJ目線の話は凄く面白いと思う」

東京の参加者からアナログレコードについての意見も飛び出します

参加者(男性) 「もう20年くらいずっとDJやってまして。アナログを今でも一生懸命掘って、アナログで頑張って東京でDJ しているんですけど。やっぱりこういうジャケットのアートワークの素晴らしさとか、こういうカバーも色々なバージョンがあって、一生懸命掘って。良い曲を探すってスタイル、そういうのをまだ、東京の若い子たちに広めたいなぁと思って地道にやってます」

音楽のデジタル化が進む変革期である現在において、とても貴重なお話でした そして地元仙台から世界で活躍しているDJ KENTAROの話題へ・・・ ヒップホップのレコードを擦って音を奏でるスクラッチというスタイルについて

濱田 「このレコードの使い方は賛否あるかもしれないけどね。スクラッチ自体が最初出てきた時はどうなんだ!っていうね。千葉さん、最初そういうのなかったですか?レコードを擦る抵抗感みたいな...」

千葉 「いや、大事なレコードをなんてことするんだと。で、(レコードを)買い取った中に、こういうマーク(スクラッチの目印にするため、レコードにシールをはることがある)てのは結構付いてて。ひどいやつは丸いところ(ラベル)にも貼るもんだから、レコード一枚がダメになるっていうね。あまり良いイメージはございません」
濱田 「ほんと、いまのはレコード店主ならではの。そりゃそうだっていう。でも、それがこれだけのカルチャーになっているっていうのも認識して、面白味も感じていくべきだと思いますね」

最後に参加者の皆様から感想を頂きました

鈴木 「今日は色んな方たちが集まったので。例えば、ダンサー目線で踊れる曲だったりとか、DJの目線で自分がかけたいとか。スクラッチやる人だったら、このスクラッチは自分にはできないとか。そういう色々な目線で見たかっこいい曲がばんばん出てきてたので凄く面白かったです。ありがとうございました」60代女性 「まったく違う世代の人間なんですけど、凄く楽しかったです。ほんと嬉しかったです。ありがとうございました」

今回のテーマを「地元仙台の音楽家」としたことにより、地元に焦点を絞った意見を広く聞くことができたのは 大きな収穫でした。 地元の音楽を知る機会はまだまだ少ないように思います。 くわえて、地元音楽コミュニティーの特性として、作り手と受け手の関係が一方的ではない場面も多く見受けられました。このレポートで紹介できたのはごく一部ですが、くろい音楽室は、普段あまり交流することのない様々な立場の人々が意見交換できる貴重な場所だと改めて感じました。

報告: 濱田(宮城アナログ文化協会)、東北学院大学ブラックカルチャー研究会








*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=996#report


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