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報告 2014年06月29日更新
第4回「赤べこレコーズのしらべ 〜クラブ歌謡曲 アイドル編〜」レポート
【開催概要】
日時:2014 年 6 月 29 日(日)15:00-17:00
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
(参考: https://www.smt.jp/projects/kuroi/2014/06/4-.html)
* * *
2014年1月に引き続き、赤べこレコーズさんのご協力のもと開催した「クラブ歌謡曲」。
今回、テーマとなった〈アイドル〉は前回の「クラブ歌謡曲」の中で、来場者が熱心に自身とアイドル音楽にまつわる思い出を話してくれたことが発端となりました。その時にアイドルは青春時代と強く紐づけられていることを知り、それはとても印象的で、音楽の単純な趣味趣向だけではない音楽の存在というものをその方をも含め、うかがい知ることとなりました。
そもそもアイドルと音楽は、アイドル歌謡と評されるほど密接な関係にあり、昨今のアイドルブームも興味の有無は別として、CDの売り上げやマスメディアへの露出などからもその盛り上がりは肌で感じ取らざるを得ないように思います。そんな現代を象徴するアイドルを音楽の観点から眺めた時に、それはどのように感じ取れるのだろうか。今回は、このような思慮の末「アイドル編」の開催へと至りました。
今回のレポートでは、当日紹介した音楽の中から松本ちえこさんの曲とそれにまつわる対話を紹介します。
ゲスト:赤ベこレコーズ
モデレーター:濱田(宮城アナログ文化協会)
アシスタント:原田(東北大学学友会オーディオ研究部)
司会:高橋
書記:鈴木(さち)
音楽愛好家:千葉(レコードショップJ&B)、佐藤(SOUL ON TOP)、佐藤(仙台なびっく)、東北学院大学ブラックカルチャー研究会:鈴木(萌)・千葉・小山・石塚
♪ 松本ちえこ『深夜のディスコ』(1976年)
https://www.youtube.com/watch?v=Zdqt0OSdJ3k
会場1:ファンキーで、アイドル曲っぽくなくて、おもしろかったです。アイドルソングにする気がまったくない感じが。
濱田:最初ほぼシャウトみたいになってるけど。
赤べこ:シャウト(笑)。全部シャウトじゃんこれもう(笑)。
濱田:なんか気がついたらちょっと歌ってたよね。
赤べこ:歌ってた。サビでちょこっと歌ってて。内容的には自分の解釈ですけど、スピッツ君っていうのは、多分犬なんでしょうね。こう、ワンワンッていってて。最初聴いてるときは、クラスの好きな男の人とディスコに行く話しだと思ったら、途中でワンワンって入ってきて。あれ、これ犬?犬と一緒ってぇ。
濱田:そのへんは、アイドルを保ってるんじゃないですか?(笑)。
赤べこ:そうなんですよね。多分、恋愛とかご法度なんじゃないですかね、この年代のアイドルの人は。だから、そこを犬。「ひどい人ねっ」とか言って(笑)。今ではこういう楽曲は出せないけど、ある意味貫き通してます。
会場2:曲というよりも、彼女が一世風靡した時にシャンプーのコマーシャルに出てて、ものすごくかわいかったんです。で、やっぱり愛くるしいし、美人系ではないんですけど、やっぱりこう、なんていうんでしょうかね、チャーミングっていうかお茶目な感じで。かなり人気はありましたね。
赤べこ:いやー、そうなんですね。他にあれですか、そのシャンプーのCM以外に、結構その当時は売れっ子で出てらっしゃったんですか?
会場2:えっと、化粧品。リップクリーム、くちべに。
赤べこ:なるほど、そういう感じなんだ。へー。
濱田:そんなにいっぱいでてたらCM女王クラスだよ。それもう。
赤べこ:うーん、すごい。今でいったらぁ、それこそなんだろう。
濱田:多分ね、この話をちょっといれてからね、またこの曲聴いたら結構やばいと思う。
赤べこ:(笑)。それ、どっちの意味で?
濱田:いや、なんかわかんないけど(笑)。
ピンクレディーがデビューした同年(1976年)。彼氏役のペット(犬)と女学生役のアイドルの掛け合いは、いわゆるアイドル音楽のイメージとはほど遠く、来場者の想像を一つも二つも超えた楽曲に会場は驚きに包まれました。そんな中、松本ちえこさんは当時、多くのCMに出演されていたという会場からの声に、今でいうとだれなんだろう?とわたしたちは現在と照らし合わせつつ、そんな人がこんな奇天烈な音楽を歌うのかと、その時代はもちろん、業界の裏側までをも思い浮かべ、勝手な想像で頭をにぎわすのでした。
今回、〈アイドル〉という一見、偏見すらもたれがちなテーマを通しての開催となりましたが、時代とともに突き進む多種多様且つ莫大なアイドル群に翻弄されながらも、音楽とアイドルの密接な関係性が改めて浮き彫りになったように思います。
また、音楽はさまざまな情報や環境等によって、絶えず自分との関係が変化しうるものだと実感する機会ともなりました。それは音楽との多様な関係性において、わずかな一片かもしれませんが、そのようなことを単純なキーワードからではなく、世代の垣根を越えた会全体の話を通してうかがい知ることが出来たということは、日本では稀な"音楽の対話"において極めて重要な意味合いを持つように思います。
報告:濱田直樹(宮城アナログ文化協会)
*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=9653#report)