失われた村の風景を記憶しなおす 2019年10月26日更新

【展覧会】黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-


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会期 2019年10月25日(金)〜2020年1月5日(日)

※11月28日(木)は休館、12月29日(日)から1月3日(金)は年末年始休館

会場 せんだいメディアテーク 7階ラウンジ

時間 9:00~22:00

料金 観覧無料

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■企画者在廊日

本展示の企画者、小田嶋 利江が展示会場に滞在します。

2019年11月7日(木)・11月21日(木)

   12月5日(木)・12月19日(木)・12 月26日(木)

いずれも11:00から15:00に在廊します

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「失われた村の風景を記憶しなおす」プロジェクトは、黒川郡大和町升沢地区を撮影したフィルム写真のデジタル化と目録作成を行うプロジェクトです。  

升沢地区は、1990年代末に日米軍事演習を契機に集団移転がなされましたが、この当時、村のくらし全般を対象とした記録保存調査に参加していた手代木信成氏が、移転前後の村の人々や自然の風景を撮影していました。  

調査は、1999年から2003年まで、大和町と東北民俗の会の共同で行われ、『升沢にくらすー集団移転に伴う民俗調査報告書ー』にまとめられましたが、それに掲載されなかった写真もありました。

このプロジェクトは、未公開分を含むフィルムをデジタル化し、各写真に資料情報と手代木氏の「記憶の言葉」を付して資料目録を作成するために、2016年よりせんだいメディアテークと協力して活動を行っています。  

この展覧会では、プロジェクトの企画者で升沢の民俗調査に参加していた小田嶋利江氏が、手代木氏の撮影した約3000枚のフィルムの中から、村の人々の暮らしや自然の風景の写真約300点を選び、各写真にまつわる「記録者の言葉」と「土地の人から聞いた言葉」を添えて紹介します。

■制作協力

展示デザインプランニング:川村智美

チラシ・ロゴデザイン:根朋子

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「失われた村の風景を記憶しなおす」プロジェクト

https://www.smt.jp/projects/masuzawa/

 いま、宮城県黒川郡大和町升沢地区には、集落としての姿はない。しかし、かつてここには、船形山(ふながたやま)への登山口となる最奥の村があった。藩政時代、出羽へ抜ける街道の関所として藩の御番所が置かれ、近代は薪炭などの山林 資源の供給地となり、戦後は用材の伐り出しでにぎわい、いまは船形山登山口として登山者に親しまれている。かつての村は、船形山系の広大な自然に抱かれ、山間集落のくらしの伝 承をとどめていた。村に鎮座する船形山神社の古風な作神祭りは、かつては郡域をこえた多くの参詣者でにぎわった。

 2000年の升沢の集団移転にあたって、大和町と東北民俗 の会*の共同で、村の伝承全般についての記録保存調査が行われ、その調査に参加していた同会の手代木信成氏によって、移転前後の村の家々や人々、そして村のくらしや自然の風景が、多数の写真によって記録された。

 調査報告書刊行後、手代木氏の手元には、報告書に収録しきれなかった多くの写真が未公開のまま残されていた。当プロジェクトは、これらの写真約3000枚をデジタル化し、各写真を軸に、撮影内容・状況・背景・周辺のエピソードなど、 撮影者や関係者からの情報を立体的にまとめることを目的とする。その活動は写真を介した村の再記憶となり、その成果は村への記憶の窓ともなるのではないだろうか。

*東北民俗の会

1960年(昭和35)に、宗教学者である堀一郎を初代会長として発足した東北地方の民間民俗学研究団体。

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升沢集団移転と 升沢民俗調査

1996(平成8)、升沢地区に隣接する陸上自衛隊王城寺原 (おうじょうじはら)演習場が、沖縄米軍の実弾射撃訓練を受け 入れ、その砲撃音などの補償として、1997年から升沢地区集団 移転事業が開始された。2000年には村人はすべて、家を解体し土地を更地にして、麓の三峰地区に集団移転した。

そんななか、1999年から2003年まで、大和町と東北民俗の 会の共同で、升沢地区の民俗全般を対象にした記録保存調査 が行われた。その調査に参加していた手代木信成氏は、移転前 後の村の人々のくらしや自然の風景などを多くの写真として記 録した。その中の一部は報告書『升沢にくらす-集団移転に伴う調査報告書( 2003東北民俗の会・宮城県大和町教育委員会)に収録されたが、その他多くの調査時の写真は、未公開のまま手代木氏の手元に保存されていた。

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一本ぞりで材木をおろす 一本ぞりに切りだした材木をつけ、腕木でかじを取りながら雪の斜面をすべりおろす。上に乗るのは孫たち。

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炭窯にこめる木を割る 木炭を焼くために丸太を割って棚に積む。後ろの三角の木組は炭窯の上に架けた屋根。割った木は窯の中に立て並べられる。

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ボンテン*を肩に山頂を目ざす 船形山神社の祭礼では、豊作祈願のボンテンを男たちが奪い合う。かつて境内にあふれた信者たちが崖から落ちることもあったという。

*ボンテン 長い棒や竹の先に白い紙や布を着けた神具。 厄を払ったり、神への供え物にする 。

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升沢集落、師走の雪景色 升沢集落をつらぬいて船形山登山口までのぼる本道。その両側に村の草分けである旧家のイグネ( 屋敷林 )の古木が見える 。

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升沢橋から見た厳寒期の荒川 升沢地区を構成する下原・種沢・升沢は、 いずれも荒川の河岸段丘上に村が営まれた 。かつて升沢橋は丸太 橋で、川の増水によってしばしば流された。

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雪をかぶった茅葺民家の奥に船形山系の峰を望む  升沢で茅葺屋根のまま一棟だけ残っていた家 。棟にはりだした煙り出しと、家を囲むイグネ(屋敷林)の杉林が見える。

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早春の雑木林、水仙の群落 芽吹いたばかりの明るい雑木林の若葉の下には黄色い水仙の群落が広がる。

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男たちのお茶っこ飲み お茶っこ飲みは女たちだけのものではな い 。男たちのお茶っこでも山盛りの漬物と山菜の皿が並ぶ。

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授かったボンテンを田の水口に供える 船形山神社の祭礼で争われたボンテンは小さなボンテンに小割りにし 、田植えのとき田の水口にさして豊作を祈る。

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主催 「失われた村の風景を記憶しなおす」プロジェクト

   せんだいメディアテーク(公益財団法人仙台市市民文化事業団)

助成  一般財団法人 地域創造

当プロジェクトは、せんだいメディアテークの事業「メディアスタディーズ」の一環として実施されています。
メディアスタディーズ https://www.smt.jp/projects/mstudies/

お問い合わせ
せんだいメディアテーク 企画・活動支援室
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-4483  FAX 022-713-4482

office@smt.city.sendai.jp


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