2015年07月15日更新

この展覧会について


物語りのかたち − 現在(いま)に映し出す、あったること」



・・・歴史は「声高に」物語るべきではない。しかし、「声低く」ではあれ物語られない限り「死者の声」はわれわれのもとまで届かないのであり、忘却の海の中に消え去るほかはない。歴史的過去に埋没した死者の声を掘り起こし、それを知覚的現在にまで伝達する「精神のリレー」を可能にするものこそ、語り手と聞き手との批評的共同作業とも言うべき「物語り行為」なのである。 野家啓一『物語の哲学』



 せんだいメディアテークは、2015年度の自主企画展覧会として、「物語りのかたち - 現在(いま)に映し出す、あったること」を開催します。

 震災以降、せんだいメディアテークでは、1970年代から東北の民話の採訪活動を続ける市民活動団体「みやぎ民話の会」と協働して、伝承の民話の語りを映像などで記録し公開する活動を行ってきました。この展覧会は、これらの民話の記録をもとに、美術や漫画の作家が、現在の社会に照らして、私たちにとっての民話とはなにかを捉え直し、表現したものです。

 東北の民話は、厳しい環境のなかで生きる人が、自然への畏敬の念や、人生の悲哀、あるいはおかしみを、豊かな発想によって物語化し語り継いできたものです。この暮らしのなかで育まれたユニークな想像力と、物語られることで実感される過去との連続性を3名の作家が表現します。宮城県在住の漫画家で『ぼのぼの』や『I(アイ)』などの作品で注目を集めるいがらしみきお、写真や映像などを用いながら、メディアによって形作られる社会について批評的な表現を行う田村友一郎、子どもたちとの共同制作を通じて、彼らの豊かな感性の視点から、社会の制度や慣習をシニカルに提示する山本高之の3名の作家が、独自の観点から民話を解釈し、形にあらわします。

 過去の出来事「あったること」を他者に伝え、想起の連鎖を生んでいくものとしての民話とアートの展開にご期待ください。


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