報告 2012年11月24日更新

第5回3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト 公開サロン「みつづける、あの日からの風景」レポート


【開催概要】
日時:2012 年 11 月 24 日(土)14:00-16:00
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
(参考:https://www.smt.jp/projects/teiten/2012/11/3-11--9.html


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第5回目となった今回は、定点観測の目的について、今までより1歩進んだ話をしてみたい、ということから始まりました。まずひとつは「資料として後世に残すため」ということ。もうひとつは「東日本大震災に、興味・関心を持ち続けること、そして持ち続けてもらうこと」だと思っています。この2点を踏まえて、公開サロンがスタートしました。

今回ゲストで来ていただいた方が、2011年4月24日に撮影した写真。

アゲハ蝶の写真

一見、震災と関係のないように見える写真ですが、実はこの写真は神戸を含めあちこちで大きく取り上げてもらっている写真のひとつです。被害を直接伝えるのではなく、写真を撮った時の想いが、震災を語る、ということを感じさせる一枚です。

震災当時、お子様が小学校6年生で、卒業式の練習をしている時に被災。結局その小学校では卒業式ができず、隣の高校の体育館を借りて卒業式をした、という状況でした。不安な毎日を過ごす中、ある日玄関にアゲハ蝶のさなぎが落ちているのを見つけ、実はそれは建物についていたものが度重なる揺れで落ちてしまったもので、震災から助かったアゲハだから「しんちゃん」と名付け、毎日毎日「しんちゃんだいじょぶかな」と、お子様と一緒にさなぎを観察していました。
この写真は、4月24日の朝に、羽化する直前に撮影したものです。しんちゃんがさなぎから出てきて大空に飛んでいく様子を見て、希望を感じ、「自分たちも、がんばらなきゃ!」という思いを親子で強くした、記念の1枚になった。とお話ししてくれました。
ただのアゲハ蝶の写真ではない、外に出ない「心」の部分。余震も続き不安な時間が流れていく中、心が折れる部分と、それでも復旧復興に向かってがんばらなければ、というその両方の思いが、この写真には込められています。
これらは写真アーカイブだけでは消えてしまうことで、併せてテキストアーカイブもしていく必要がある、と思ったきっかけになりました。

次に定点観測ですが、女川町観光協会から寄せられた写真を紹介します。地震発生から約50分後の写真です。

女川町の震災時の写真

この定点観測として、約1年8カ月後に当NPOが撮ったものが、こちら。

女川町の震災後の写真

震災前の女川を知らない人が、今この写真を見たら、もともと何もない場所で、更地だ。と勘違いする方がいるかもしれません。しかし実はここには津波が押し寄せ、全体が水没。左側に写る建物が海抜18m、さらにその1階部分1m95cmまで浸水した。という情報とともに前後の写真があることで、初めてその状況を知ることができる。資料的価値があると言えます。

ここで、ゲストの方からの意見で「阪神淡路大震災の当時、衝撃を受けた写真があって、それは三点写真だった。震災前の写真もあると、さらにいいものになるのでは」という意見が出されました。また「仙台や県内で、写真を趣味にしている多くのグループが震災の写真を撮っている。そういった方々とネットワークを組みながら市域を飛び越えて活動しては」という意見や、「例えば定年退職された世代の方々であれば、ある程度お時間もある。写真が好きでカメラや機材もお持ちで、さらに土地勘がある所なら、撮りたいっていうかたは結構いらっしゃると思う。そういった方にボランティア登録をしてもらって、お近くだったら撮ってください、という形でやってみてもいいのでは」という案が出されました。

全体の様子1

ご協力くださる方々を広く募って、撮影は個々でしていただくことになっても、その皆さんで集まる機会を作れば、撮影した時の話も聞けるし、場所がわからない写真もそこで公開すればわかる人がいるかもしれない。そういった、さらに一歩進んだ広がりも期待できるかと思います。

このように、活動を広げ、多くの方々に関わっていただくことは、それぞれのかたがそれぞれに震災を改めて考えるきっかけにもなります。これは「東日本大震災に、興味・関心を持ち続けること、そして持ち続けてもらうこと」にもつながります。
実はこの日も、宮城県沖を震源とする震度4の地震が2度起こりました。まだまだ余震が続く中、改めて定点観測を続ける、ということの意味を考えさせられた会となりました。

全体の様子2

報告:NPO法人20世紀アーカイブ仙台





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=3701#report


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