報告 2012年10月27日更新

第4回3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト 公開サロン「みつづける、あの日からの風景」レポート


【開催概要】
日時:2012 年 10 月 27 日(土)14:00-16:00
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
(参考:https://www.smt.jp/projects/teiten/2012/10/3-11--8.html


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第4回目にあたる10月27日、今回も多くの方々にご参加いただきました。震災から1年7カ月。定点観測に答えがあるとは、まだ思えない。そんな中で、どう定点観測を続けていくのか、みんなで意見を交換しあいました。

今回ゲストで来ていただいた方が、3月13日に撮影した、「倒壊した鹿落旅館」の写真。

2011年3月13日倒壊した鹿落旅館

この定点観測として、当NPOが後日撮ったものが、こちらの写真。

2012年8月25日NPO法人20世紀アーカイブ仙台が撮影

この鹿落旅館の様子をご紹介した際には、鹿落旅館の3代目と、女将さんが来てくださり、震災当時の貴重なお話をしてくださいました。
この鹿落旅館のように、土地勘があれば、他の方が撮った写真でも定点観測は容易です。しかし、土地勘がない、場所の見当がつかない場合、場所を特定するのが非常に困難で、定点観測のひとつの壁と言えます。

先日、当NPOが石巻で行った定点観測においては、地元のかたに協力してもらい、場所を探し案内してもらいましたが、言われてもなお、ここだとわかるまでに時間がかかる。電柱の位置や、山の稜線など、ほんの少しの手がかりで定点観測を進めているのが現状です。今回のように、土地勘のある方と一緒に歩く、というのは、定点観測には非常に有効だと実感しました。またその際、地元のかたに、震災の話はもちろん、震災前の町の様子、歴史などのお話を伺うということも、大変興味深い体験となりました。数人でチームを組んで、現地のかたに案内をしてもらいながら、定点観測を一緒に進める、という言わば被災地ツアー的な物を、今後していけたらと思っています。

ゲストの方々から出された意見としては、「例えば荒浜をやるので何人か集まってくださいとお声がけをして、荒浜の仮設住宅のかたにもお声がけをして、数人で、数組に分かれて同じことをやると、一度に同じことができる、これをエリア的にやることで、面を点でつぶしていくことができる」というワークショップをしたらどうかという意見や、「場所が特定できない写真については、公募したらどうか。「この付近わかる人いませんか?」と声を掛けて問いかけてみる。すると、近くに住んでいる人やわかる人が教えてくれるのではないか」という提案がありました。実は、撮った本人に「場所がわからない」と言われたことがあり、これは定点観測には向かない写真だと思っていたが、このやりかたにより、もしかしたらわかる人が出てくるかもしれない。そうすれば、さらに多くの定点観測を進めることが可能になります。
「自分で撮っていては判断できない部分がある。どういう写真だったら残す価値があるのか、がわからない。何を定点観測するのか、そういう情報を共有できたら、今後のきっかけづくりになると思う」という意見や、「アフターの写真も、もうかなり集まってきていると思うので、それらを早めにアップして、「こう変わってきていますよ」というのを周りに見せたほうがいい。ネットの中でコミュニティがあれば、こういう動きがあるんだ、とか、じゃあ自分もここを撮ってみよう、とか、それを見た一般の人が動き始めてくれるのでは」という意見が出ました。これらはどちらもネット上で早めに対応したいと思っています。

発表の様子

東京からいらしてくれたかたは、「大きな被害が目に見てわかる、というものに意識が集まりがち。しかし例えば、無名な場所の写真があって、ここにもう一回行ってみよう、というコンセプトがいいと思った。定点観測は「もう一回行ってみよう」の積み重ねだと思う。これからは、誰かが残した記録に対して、レスポンスを返していく、ということが大切では」とお話ししてくれました。

他にも「ネットを使える人、使えない人とをつなげていく手段を考えていかなければならない」「色んなアプローチの仕方をすることで、カジュアルな感じで個人個人みんなが関われるような形で続けていけば、有意義な定点観測になるのでは」など、今回も、いいヒントをたくさんいただきました。

関心を持ち続ける、興味を持ち続けるには。次の世代に残すには。そのためには、次の世代の人とも一緒にやっていかなければ、この活動は長く続かない。若いかたたちと、後世に残す意味を一緒に考えながら、今後も定点観測を続けていこうと思っています。

鹿落旅館の旗

報告:NPO法人20世紀アーカイブ仙台





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=1470#report


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