報告 2016年05月29日更新

第51回てつがくカフェ「被災地で/から、広域避難者の今を考える」レポート


【開催概要】
日時:2016 年 5 月 29 日(日)15:00-17:30
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
ファシリテーター:西村高宏(てつがくカフェ@せんだい)
(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2016/05/51.html


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写真1

今回は、北海道広域避難アシスト協会代表の佐藤伸博さんをインタビューした映像の視聴から始まりました。この映像から触発された言葉が、てつがくカフェの前半では交わされました。

写真2

「避難」には種類があり、例えば「自主避難」「強制避難」「家庭内避難」があるのではないかという指摘。「自主避難者」たちが、元々の居住地の人びとから「なぜ帰ってこないんだ?」「復興の妨げになる!」といった言葉にさらされてしまい、二重の分断に陥っているのではないかという危惧。

そして、「自主避難」の根拠は、実はぼんやりとしていて、それは絶対的な価値基準の不在を示しているのではないかという見解。「避難者」と「移住者」は違うのではないかという問いかけ。

また、「避難」という言葉からは、「原発事故による避難」についての発言が誘発されていましたが、津波や地震からの避難もあるという指摘もありました。

写真3

中盤は、「キーワードをあげる」ことを意識して話す時間です。あげられたのは、以下の4つでした。

・制度の枠組み/個人の自由/絶対的価値
・帰る/選ぶ
・個人の意志(どこでどう生きるか)
・共同体の意志(お互い、生活、支え)

写真4

そして後半は、キーワードを用いて〈問い〉を練り上げる時間です。9つの〈問い〉をつくることができました。

Q.避難者は、いつまで避難者なのか? 避難者じゃなくなるのはいつなのか?
Q.個人の意志と、共同体の意志は、対立しているのか?
Q.制度の枠組みは、個人の自由を救えるのか?
Q.個人の自由はどこまで反映されるのか?
Q.帰る場所をどう決めるのか?
Q.誰が避難者なのか?
Q.避難者・被災者の自立を支援するとは?
Q.失われた土地の難民がどこに住むのか?
Q.私たちは避難者に、どう向き合うのか?

以上のなかから、「個人の意志と、共同体の意志は、対立しているのか?」についてさらに考えてみることになりました。ここでは

「〈共同体〉とはそもそも何を意味しているのか?」
「〈共同体〉に意志はあるのか?」

といった、議論がなされました。

〈広域避難〉という現在も進行している問題を、問題の渦中に留まりながら考え続けるためには、相当な知的体力が要るはずです。今回は参加された方々との粘り強い対話によって、〈広域避難〉について吟味することができました。引き続き、このような場を開いていくことができればと思っています。

写真5

報告:辻明典(てつがくカフェ@せんだい)





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=13034#report


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