報告 2023年04月30日更新

【レポート】第83回てつがくカフェ(オンライン)


【開催概要】

83回てつがくカフェ@せんだい

日時:2023年3月11日(土)14:00-16:00

会場:zoomを使用したオンラインでの開催

ファシリテーター:安田義人(てつがくカフェ@せんだい)

ファシリテーショングラフィック:三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)




今回のテーマは 「帰りたいけど帰れない」について考える でした。

 

単身赴任しているため家族と面と向かって話せないという距離的な問題。タスクが残っているため帰れないという条件的な問題。実際には帰っているけど気持ち的には帰っていない心理的な問題。あの時間がすごく楽しかったのにあの時にはもう帰れないという時間的問題。震災で実家を失った参加者からは、物理的にあの頃の実家には帰れない、そして心理的にも帰れていないという2つの問題が混ざった場合などが挙げられました。ここまでをまとめると、

 

・物理的な距離の問題があり帰れない

・作業や仕事が残っていて条件的な問題があり帰れない

・心理的な違和感の問題があり帰れない

・時間的な距離の問題があり帰れない

・物理的・心理的な問題があり帰れない

 

ここで一旦、東日本大震災の黙とうのため休憩をはさみ対話を再開しました。

 

再開後に上記の帰れない問題をまとめると、私たちは帰ったと普段思っていても実は帰れていない。同じ場所や時間や心理状態はないため同じところに帰ることはできない。でも私たちは帰ったと思っている。その変化がわずかだから問題にならないだけで、震災などで変化を無視できないほど大きくなると私たちはその変化についていけなくなり罪悪感や負い目など負の感情を抱いてしまうと発言された方がいました。また帰れないことを考えるには、帰ったと思える条件を見つけないと問題がはっきりしないのではないかという意見も出ました。ここで別の視点から、場所や時間ではなく特定の人に再会して帰ってきたと思うことから、人に帰るという要素もあるという参加者がいらっしゃいました。これに同調するように同窓会などを例に挙げて、場所や時間や心理状態が変わっても人がいなければ帰ったと思えないことから人という要素は非常に重要だという意見が出ました。また当初は帰る場所ではなかったとしても何回も帰ることで新しい帰る場所を作る・作られることもあると、帰る場所は新しく作ることができる可能性を示唆した参加者もいらっしゃいました。

 

ここまでで主なキーワードを抽出しました。

 

・離別・喪失(...傷つく、回復する、断念、再出発)

・人

・なつかしさ(なつかしむ)

・恋しさ(恋する)

・受容・受け入れる(場所)

・五感

・海(母、根元に還る)

・夢(自分自身に還る)

・ちがう自分(→全身するエネルギーになる)

・基準(ニュートラルに戻す)

・安心

 

これらキーワードから以下のような問いが挙げられました。

 

・帰りたいところは恋か夢か新世界(再出発)か?

・常に私たちがなつかしさを感じられないのはなぜか?

・帰る場所がなくなった時に再出発するには何が必要か?

 

特に最後の問いは、帰ることや帰る場所は絶対的なものではなく移ろいでいくものという参加者のなかで共通認識が出来上がった結果の問いではないかと思います。帰れないことに執着するよりも再出発するにはどうすれば良いのか、新しい帰る場所を作るなど、前向きな意見や問いが挙がって今回の対話は終わりました。

 

(文責:てつがくカフェ@せんだい)


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