報告 2023年11月02日更新

【レポート】第87回てつがくカフェ ーシリーズ「結婚の定義」ー


【開催概要】

87回てつがくカフェ@せんだい

日時:2023年10月8日(日)14:00〜16:30

会場:7f スタジオa

ファシリテーター:安田義人(てつがくカフェ@せんだい)

ファシリテーショングラフィック:三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)


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今回は「制度外の結婚?」というテーマで対話を行いました。前回のテーマ「制度としての結婚?」での対話を受けて、それを補う形で立てたテーマです。

 

 最初に制度外の結婚としていくつか例が挙げられました。近親婚、未成年者との結婚、異類婚(2次元キャラクター、エッフェル塔、動物など)...これら以外にも事実婚、複婚、死後婚などがあります。「これら制度外の結婚をする当事者は一体何を求めていたのか」、一般にはあまり耳にしない結婚も含まれていたためこのような疑問が上がりました。この応答として「社会に認めてもらいたいという目的があるのではないか」、動物婚を例にすれば、「とても可愛がっているペット」ではなく「結婚」とすることで飼い主とペット以上の関係であることを社会に示し認めてほしい、このような関係性の認知を目的としている結婚があるのではという意見が出ました。
 制度(ルール、法律)自体に関する言及もありました。制度を作るとどうしても制度外は生まれてしまいます。「しかし私たちは制度を道具のように使いこなし適切に制度を作り直すことで、ただ抑圧するものではなく本来の理念に基づき、それこそ人々の自由な気持ちを尊重するような制度に拡張することができるのではないか」という意見が出ました。
 また、自ら子供を産み育ててきた経験から、制度はある程度限られた範囲のものだがそれは安定して社会を維持する必要から要請されたもので、この安定は次世代が安心して子供を産み育てることにも寄与し好循環を生んでいる、との見解を述べる方もいました。
 一方で制度と利用者の関係について、「制度は大多数になじむ枠組みであり、その枠組みに沿っていれば、考えなくても機能し便利な面がある」と持論を語られた参加者がいました。海外では同性間や近親間の性愛関係に厳罰が課される例もあるのに比べれば、日本はある程度寛容な面があるという指摘もありました。
 このあたりで自由対話を終え、キーワードの抽出に入りました。以下のキーワードが挙がりました。


・社会
・一方的
・大多数になじむ枠組み
・限界
・自由
・道具
・考えない楽ちんさ
・範囲
・理念
・目的
・拡大
・複雑
・そのまま認める
・認めてもらいたい
・多様性
・気持ち
・時間(過去、現在、未来)

 

 ここから「一方的」というキーワードを挙げた参加者の発言を基にキーワードを深めていきました。「無生物との結婚、意思を持たない者との一方的な結婚に違和感を覚えるのはなぜか」との疑問に対して、「一般的な結婚でも、当事者双方の気持ちがすれ違っている場合も多い」という意見が出ました。また、「エッフェル塔や有名キャラクターはみんなの共有物であり、誰かが一方的に結婚という形で"所有権"を主張することには違和感がある」という声もあり、これに対しては、たとえばキャラ婚について「自分の心の中にあるそのキャラクターの概念と結婚する、ということなのであれば共有物の独占にはならない」という意見もありました。「"概念との結婚"というのがピンとこない」という声に、「たとえば、他界した配偶者と今でも結婚しているという気持ちを持っている人は、"概念"と結婚していると言える」という見解を述べる参加者もいました。

 

 そして最後に、ここまでの対話を基に今回のテーマ「制度外としての結婚」に関する問いを各参加者に作って頂きました。

・「制度外の結婚」とは制度としての結婚を考える重要な問いであるのか

・「制度外の結婚」とは"認められない結婚"なのか、"そもそも結婚ではないもの"なのか

・「制度外の結婚」は自分の子供に勧められるか

・なぜ人は「結婚」を欲するのか

・なぜ「結婚」という言葉にこんなにも悩まされないといけないのか

・社会が愛に限界をつくるのだろうか

 

 これらの問いを立てたところで時間終了となりました。制度外という側面から結婚を捉えることでより一層結婚についての理解が深まった2時間半でした。

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