報告 2023年11月19日更新

【レポート】第88回てつがくカフェ(オンライン)


【開催概要】

88回てつがくカフェ@せんだい

日時:2023年11月19日(日)10:00-12:30

会場:zoomを使用したオンラインでの開催

ファシリテーター:古藤隆浩(てつがくカフェ@せんだい)

ファシリテーショングラフィック:三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)



 

今回のてつがくカフェオンラインは、「ファンとアンチ」がテーマでした。
ファンと推しはやや異なるのでは、という話題提供から対話がスタートしました。推しは気軽になれる一方、ファンはハードルが高いと感じる理由は、対象との距離感が「推し」の方が遠いからとか、「ファン」には責任が発生するから、という意見が出ました。

 

関連して、四六時中対象を考えている、グッズは買わないし球場には応援には行かないけどファンのチームが負けると落ち込む、対象にストーカーまがいのことをする人もいる、などファンの度合いも人それぞれでした。好きになるまで時間がかかることを大切にしたい、一瞬で好きになることもあるなどの違いも話題に出ました。

 

また、ファンや推しは自己紹介などで当然のように聞かれて、「いて当たり前」さらには「推しがいないと人じゃない」とみられた経験をした方もいました。そこには自分の好きなものや没頭できるものがあって当たり前、人生を豊かにするという思い込みがあることが見えてきました。

一方で、推しを意識的に作らないという人もいました。その理由は「何かにとらわれたくない」「推しは余裕(時間・お金)がある人が持つもの」などが挙げられました。また、特定の野球チームや歌手ではなく、野球や音楽そのものを楽しむため、特定の推しを持たない人もいました。


「アンチ」についても話題にあがりました。「アンチが生まれてスターが育つ」という歌詞を引用し、スターを育てるアンチがファンと共存・両立できる可能性が示唆されました。アンチは主にSNSに存在し、煽る人もいると同時に、ファンと根は同じではないかという意見も述べられました。例えばサッカーのフーリガンのように、熱狂と怒りが選手を殺害するまで発展する例が挙げられました。またそのような過剰な思いが社会へ向けられると、戦争に繋がるのではないかという可能性も指摘されました。一方で社会に向けられたアンチテーゼ(アンチの語源)から名曲や名画が生まれる場合もあり、一概にアンチが悪いわけではないという考えも浮上しました。ファンとアンチは反対語ではなく、無関心が反対語であるとの見方も示されました。

ここまでの自由な対話内容を踏まえて、「ファンとアンチ」を考える上でキーワードを挙げていきました。挙げられたキーワードは以下の通りです。

・ファン/推し/好き/おたく
・関心
・二者選択をしたがる思考
・距離感
・好きとは何か
・本人(対象)との関係

ここから、「距離感」と時間について考察が進みました。対象が好きになったファンは対象がそのままでいて欲しいと願うことがあります。しかし、時間が経てば対象が自分の思いとは違う方向に変わることもあり、その際にファンを続けるか、やめるか、アンチや無関心になるかといった選択が生まれます。
また、以前は不愉快だったアンチの批判・批評が(10年経った)今は可愛らしく思えるという変化を感じた人もいました。時間によって自分と対象の距離感が変わると、ファン、アンチも変容していきます。

また、ファンサービスのように、アンチにもサービスが必要ではというアイデアが出されました。批評がその一翼となる可能性や、批判を受けることそのものがアンチサービスになり得る点などユニークな議論が交わされました。

今回はここで対話が終了となりました。「好き」という感情の個人差、ファンとアンチの複雑な関係性などが浮かび上がり、さまざまな対立を乗り越える可能性がうかがえた回となりました。


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(文責:てつがくカフェ@せんだい)


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