【開催概要】

第89回てつがくカフェ＠せんだい

日時：2023年12月24日（日）14:00〜16:30

会場：1f　オープンスクエア

ファシリテーター：辻明典（てつがくカフェ＠せんだい）

ファシリテーショングラフィック：三神真澄（てつがくカフェ＠せんだい）

今回のてつがくカフェでは＜恋愛と結婚＞というテーマで対話を行いました。

前回まで＜制度としての結婚＞＜制度外の結婚＞と対話を行っており、今回は現代の結婚で一般的となっているように見える恋愛結婚を問う形となりました。

 

まずは「恋愛と結婚」というテーマで思ったことや考えたことを自由に挙げていきました。

はじめに、恋愛においては強者と弱者が存在するという意見が出されました。コミュニケーション能力・魅力の点から自分を弱者と捉える人や、健康上の理由から恋愛を避ける人がいることが明らかになりました。

次に、恋愛や結婚において感情と性愛（身体的欲望）の両方を持たなければならないのか、気持ちだけではなぜダメなのかといった問いが出されました。対話をしていく中で、性愛だけでなく恋愛感情にも人それぞれ有無やグラデーションがあり、どちらも一概には決められないことが見えてきました。ただしその中で、人が人を大切に思う気持ちや信頼関係が大切だという意見が出されました。

 

さらに結婚において性愛が必要なのかという問いに発展しました。子孫を残す行為は野生の名残ではないのか。また、結婚もかつては家と出生（子孫をつくる）のために行われ、それが愛と出生のために変わったものの、現在では子孫を残すことが絶対的に必要ではなく、愛だけで十分になっている。しかし社会の制度がこれに追いついていないのではないかという指摘もありました。

 

そこから一夫一婦制の恋愛結婚の形に話題が移りました。その恋愛結婚の形態こそ嫉妬や独占欲を生むのではないかという懸念が挙がり、純粋にお互いの信頼で結びつく結婚の形が模索されました。例えばポリアモリー（複数愛）や友情結婚など。それらはお互いの信頼関係やWIN-WINがあれば成立するのではないかという意見が出されました。

 

現代の結婚形態について、年配のカップルがいちゃついていると夫婦ではなく不倫に見えるとの意見も出されました。これは、今の結婚は恋愛→結婚→恋愛引退というパターンで認知されているからではという指摘がありました。

また音楽や映画、文学においては（既存の価値観に則った）大恋愛が頻繁に描かれています。それらをあえて避けたり描かれ方に違和感を感じる人がいる一方、大恋愛を経験した人たちが「こういうことだったのか」とわかったという意見も出されました。恋愛は理性でするものではない、もっと非合理で抑えられないもの、という声も出ました。

 

これらの対話内容を踏まえて、「恋愛と結婚」を考える上でキーワードとなりそうな言葉を挙げていきました。挙げられたキーワードは以下の通りです。

・愛（≒大事にする気持ち）

・変わる

・人間性の交歓（→やりとりをする、築き上げる）

・熟議主義的な（→よく考える、対話する）

・健全な関係　

・ゲーム性

・不安定性

・安定

・期待

・連帯と孤立

・身体と欲望

・恋

・男と女

・信頼

・出生

・排他性

 

キーワード出しながら、さらに考えを深めていきました。

結婚に対する意見では、「信頼」が中心的な要素として浮かび上がりました。信頼は、相手を大事にする気持ちに加え、双方のコミュニケーションが不可欠であるとの考えが示されました。さらに「健全な関係」という言葉も登場しました。ここでの「健全」は純粋な信頼関係を指し、（恋愛的な）結婚や出生と切り離して成り立つものという意見が出されました。

 

一方で、「ゲーム性」を軸とした恋愛と結婚の関係性についての考察も登場しました。恋愛のゴールを結婚と位置づけ、ゲームのような要素が存在し、かけひきやコマの取り合いが不安定性を生むとされました。一方で結婚は安定をもたらすと捉えられました。

 

最後にここまでの対話を踏まえて「恋愛と結婚」をより深く考えるための問いを考えてもらいました。

・恋愛と結婚から排除されると何が残るのか

・何をもって安定するのか

・本能的に求める関係性とは

・恋愛ゲームにおけるゴールは変化しうるのか

・コミュニケーション構築においてなぜゲーム性は存在しなければならないのか

・何をもって排除されていないといえるのか

・恋愛ゲームはひとりでするか、二人でするか、社会でするか

 

これらの問いを出したところで時間終了となりました。

今回は、結婚に内在している要素を解きほぐした興味深い2時間半となりました。

次回も引き続き「結婚の定義」について考えていきたいと思います。