2023
03 02
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予告 2025年06月08日更新
【お知らせ】7月5日(土)てつがくカフェ読書会『爆弾と紙のランドセルと白いごはん』から、「戦禍の日常」について考える
次回読書会のお知らせです。
〈読む本〉
『爆弾と紙のランドセルと白いごはん』
井上きみどり作
「戦争の記憶が薄れている」とささやかれながらも、三~四世代ほどさかのぼれば、戦争の体験者にたどり着く方も多いはずです。「戦禍」という言葉のリアリティが見失われはじめ、遠い世界の出来事のように感じられるようになりつつも、やはり私たちは「戦禍」と無縁ではいられません。それは、いかなる体験なのでしょうか。想像力を精一杯に働かせることで、私たちは「戦禍」を追体験することが可能なのでしょうか。
青空から、焼夷弾(しょういだん)が落ちてきた日々があったこと。それは半紙が黒々と、墨で塗りたくられるかの如くであったこと。
昼餉(ひるげ)につく間際に、空襲警報が鳴ったこと。嵐のような破裂音が止み、逃げ込んだ防空壕から食卓へ戻ると、準備していたはずの食事は灰に覆われていたこと。
友人が学校を退学し、故郷の朝鮮に帰っていったこと。その後、かの地では別の戦争が始まり、音信も途絶えてしまったこと。
国境を行き来する戦がやってきたこと。そして私たちの内面にも、敵と味方を峻別するかのような、見えざる「国境」が生まれていたこと。
「私たちは目の前にいる他者を理解するために、内面の国境を乗り越える方法を見つけなければならない。」そう語ったのは、ギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスでした。「戦禍」とは、私と他人との間に隔たりを生むのであり、それは内面すら引き裂くような隔たりなのかもしれません。
しかしながら、他とは、そして他人とは、お互いだけではなく、世代を超えた出来事を理解するための、一つの手がかりともなりうるでしょう。今回の読書会では、井上きみどりさんの作品である『爆弾と紙のランドセルと白いごはん』を取り上げ、参加者のみなさんと言葉を交わすことを通し、「戦禍」と真摯に、かつ丁寧に向き合う時間を作ることができればと思っています。先の大戦から80年が過ぎ去ろうとし、「戦禍」のリアリティを見失いつつある現代の日本において、それでもなお、あの日確実にあったはずの争いを、現在につなぎ止めて捉えるための、大切な手がかりとなるような気がします。是非、ご参加ください。
主催:てつがくカフェ@せんだい/せんだいメディアテーク
協力:井上きみどり
お問い合わせ:shohyocafe@gmail.com(みかみ)