コラム 2021年12月02日更新

読んでみた:草の根文書館の思想


やや古い本ですが、『草の根文書館(もんじょかん)の思想』(著:安藤正人/1998年/岩田書院)は、当館で催した「草アーカイブ会議」(2016年、2017年)を考える上で参考にしたものの一つです。残念ながら現在絶版であるものの、仙台市図書館など公共図書館で借りて読むことができます。ブックレットというだけあって、薄く読みやすい本です。

20年以上前に書かれたこの本、すでに「コミュニティ・アーカイブ(ズ)」という言葉が示されています。そのように呼ばれる小さな場がカナダにあることや、北欧では「グラスルーツ(草の根)・アーカイブズ」と言われていることに著者はいたく感銘を受けていて、その理念をこのように説明しています。孫引きになりますが引用してみましょう。

"地域の主人公は地域住民である。したがって住民は、地域の歴史、つまり行政や文化の歩みについて知る権利がある。しかし、権利だけではない。地域の過去について正確な知識を持ち、その知識に基づいて地域の現状を冷静に判断し、地域の未来について発言していく義務もある。住民が地域の主人公になるということは、そういうことだ、というわけです。(pp.70-71)"

文書館についての話なので、地域の文書記録に寄っているところはありますが、写真や映像、音声をふくむ広い意味でのアーカイブであっても、同じようなことが言えるのではないでしょうか。地域の主人公として地域住民があるために、自分たちの歴史を自分たちで紡いでいくこと。その具体的な方法として、小さなものでも図書館などの一角でもかまわないので資料を保管する場所、一人でも良いので保存管理に従事できる専任の人材、そして、その資料を活用する取り組みの必要性を著者は挙げています。デジタル・データが多くを占めるようになった今日では、場所の問題はなんとかなりそうです(データだから全ての問題が解決したというわけではありませんが)。専任の人材は今日の日本では正直なかなか難しい。資料を活用する取り組みは、メディアテークの場合これまでもさまざま例があります。

「アーカイブ」という言葉が、どうしても大きな施設や仕組みを想像させるなか、「草の根」という言葉は、自分たちの手が届く範囲で始めようとする人の背中を押してくれるように思います。幸いにして、現在ではそれら小さな取り組みを見つけたりつないだりするテクノロジーはありますし。

(出版社のサイト)
http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN4-87294-116-0.html

小川直人(せんだいメディアテーク企画・活動支援室)