スタッフより 2023年09月07日更新

連載「一本の(映画・映像・動画......)から考える○○のこと」をはじめます


連載企画をはじめるにあたり、前口上のようなものを。

当館7階にある180席のホール《スタジオシアター》の英訳は《cinema》となっています。英語らしき名称の英訳がなぜ異なる英語なのかはさておき、とりあえず《cinema=映画》は......と書きだしてみましょう。

「映画は世界を見るための窓である」「映画は人生を学ぶ良き教科書」、あるいは「映画は思考の形式である」などと言われます。たしかに、自分自身を振り返ってみると、映画館が学校とも言えるほど映画を通じて知ったことは多い。ただ、だからといって映画をたくさん見たら必ず立派な人間になれるわけでもなさそうです。

では、テレビはどうでしょう。テレビで見られるものは《番組》や《映像》と呼ばれます。1950年代には「一億総白痴化」の原因とやり玉に挙げられたりもしましたが今日見ている人はかなり減っています。しかし、かつての人々より私たちが賢くなっているかどうかは寡聞にして知りません。

むしろ、「映像の世紀」と言われた20世紀が終わり四半世紀近くも経ちましたから、スマートフォンなどで見る《動画》と言うほうがしっくりくるでしょうか。最近では見るよりも自分で作ってSNSなどで公開することに熱心な方も少なくないでしょう。

《映画》《映像》《動画》......それらに対して、感動や興奮、学びや暇つぶしを求めるのかは別としても、私たちは(ほとんどの場合は音も伴って)動くイメージに囲まれて日々を過ごしています。正直、それらを消費することに忙しくて、一つひとつについて考えることは簡単ではありません。

そこで、少し立ち止まりながら考えてみようというのが、この連載「一本の(映画・映像・動画......)から考える○○のこと」の趣旨です。スタートは、さまざまな分野で活躍する4人の方に執筆をお願いしました。タイトルが示すように、作品としての良し悪しを論じてもらおうというものではありません。一本の映画、映像、動画、あるいは、これから新たな名前を与えられるかもしれない「動くイメージ」をきっかけにして考えられる、さまざまな事柄を自由に書いてくださいと伝えました。やはり人生の教訓かもしれないし、あるいは現代社会の問題かもしれないし、誰も気がつかない隠された視点かもしれません。

さしあたり、「連載を読んで興味を持った人たちがアクセスしやすいように、当館の映像音響ライブラリーやアーカイブで所蔵する資料から題材を選んでもらえると助かります」とも伝えていますが、それに限らず拡がっていくことも期待しています。また、この企画が順調に続いたら、さらに書き手を拡げていけたらとも考えているところです。取り上げられた作品を多くの方と見る機会もつくれたならばなお良かろうとも。

 

小川直人(せんだいメディアテーク)


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