2023
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コラム 2024年03月11日更新
会員寄稿文「わたしにとってのドキュメンタリー」Vol.2 猪股由美
※この企画は、みやぎシネマクラドルの活動をより理解していただくことを目的として、「わたしにとってのドキュメンタリー」をテーマに会員が自由に文章を書く企画です。
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映像作品の作り手/鑑賞者の区分でいうと、一鑑賞者で一会員の猪股由美です。2018年9月の、みやぎシネマクラドル第9回映像サロン「映画祭という試みの場~観る発見、つくる喜び、広がる世界~」に、「吉岡宿にしぴりかの映画祭」の実行委員の仲間たちと話題提供者として参加し、クラドルに入会しました。
「にしぴりか」という場所は宮城県大和町にあり、障害のある人たちのアトリエやグループホームや常設美術館や喫茶店があるところです。そこで2016年に「見渡せば、知らないことばかりのこの世界。まずはゆっくり、近付いてみよう」というテーマで始まったのが「吉岡宿にしぴりかの映画祭」です。ドキュメンタリー作品がメインで、立ち上げの際はクラドル代表の我妻和樹さんが奔走していました。その映画祭の始まりをSNSで知った私は「違いがあっても共に生きること」を大切にしているように感じ、こどもを連れて実行委員会に飛び込みました。それから7年、昨年だけは開催できなかったので、今年の11/30~12/1に開催するのが第7回になります。
もともと私の関心ごとは人文や社会で、趣味は市民活動です。そういった関心から、過去には社会問題をテーマにしたドキュメンタリー映画の自主上映会を運営することはありました。しかし、映画自体には詳しくなく、ドキュメンタリー映画をたくさん鑑賞してきたわけでもなく、観られるときに観ている、浅い関わりです。特定の社会問題に関心を持ってもらう/自分自身も理解を深める/映画を観て感想を話し合う場を共有するための媒体としてドキュメンタリー映画に接してきたと思います。
でも、映画祭実行委員を続けてきたことや、クラドルの映像サロンにもちょこちょこ参加するようになって、ドキュメンタリーを観る目が少しずつですが確実に変わってきたと自覚しています。
映画配信サービスで「ドキュメンタリー」のカテゴリ検索をすると、大自然や生き物、有名人や場所を撮った作品が多くみられますが、私が語りたいドキュメンタリーは少し違います。まだ知らない「人のいとなみ」に密着した作品。私も仕事柄「人のいとなみ」に近づいてお話を聞くことを大切にしていますが、ドキュメンタリーの場合、もっとふつうでない距離感で、さまざまな角度から、被写体になっている人と近づいていきます。プライベート空間でしょっちゅうカメラを回されて公開されるのは、被写体にとって気持ちのいいものではないのではと思いますが、そこを許容される関係性を作り、そばにいて映し、技巧を駆使して作品を仕上げています。映画という総合芸術を、ドキュメンタリー制作者は(きっと)低予算で作り、それを公開してお客さんに鑑賞してもらう。映画制作に関わる一連においてきっと苦労も多いだろうと思います。でも作らねばならぬ何かがあるのだろうと、それを受け取ることができたらと思って、いまもドキュメンタリーを観ています。
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猪股由美(いのまた・ゆみ)
「吉岡宿にしぴりかの映画祭」実行委委員/仙台市議会議員