2023
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コラム 2024年06月03日更新
【結婚指輪エッセイ・その2】左手薬指を取り戻す日
結婚指輪という風習を憎んでいる。
左手薬指という、(右利きの人間にとっては)指輪着用にとても適した指を既婚者たちに奪われているからだ。
もちろん、別に独り者が左手薬指に指輪を着けることを禁じる法律があるわけではない。やりたければやれば?と言われれば確かにそのとおりなのだが、それで「恋人できたの?結婚したの?」だのなんだの囃し立てられると思うと考えただけでも面倒で、なかなか踏み切れない。
衛生管理が重要とされる職場などで「指輪禁止、ただし結婚指輪のみ可」という規定があったりするのも納得いかない。結婚指輪だろうがそうでなかろうが、同じ指輪なら衛生面では全く変わりないはず。なぜ結婚指輪だけ許されるのか?「シンプルな指輪1個のみ可」とかすれば良いじゃないか。こんなの婚姻特権以外の何物でもない。
既婚者たちはさも当たり前のような顔をして、左手薬指という「一等地」を占領している。子供の頃からそれがずっと悔しかった。「お嫁さんになりたい」だなんて一秒たりとも思ったことのない私は、「一等地」から排除され続けるのだ。
だいたい、ただペアリングしたいだけならどの指でも良さそうなものだ。なぜ「既婚者専用」の指を決めそこに着けるのか?
独り者がこぞって左手薬指に指輪を着け始めたらどうなるのだろうか。革命である。奪われ続けた左手薬指を取り戻すレボリューションである。
もしそうなったら、既婚者たちはどうするのだろうか。
他のどこかにまた、自分たちの特別な場所を見出すのだろうか。
ちなみに結婚指輪、国や文化によっては別の指に着ける場合もあるらしい。
日本の場合、古来の伝統でもないのに結婚指輪の風習がここまで爆発的に広まったのは、「一等地」の左手薬指に着ける設定だったからこそなのかもしれない。
独占できなくなっても「一等地」にとどまり続けるか、独占できる他の場所に移るか、革命の果てに広がるのは、どんな世界なのだろう?
【文:MEME】1980年生まれ、宮城県出身・在住。アロマンティック(恋愛感情なし)でバイセクシュアル(女も男も性的対象)でノンモノガミー(1対1の性愛関係にとらわれない)でFtX(女として産まれ、性自認が女でも男でもない)。実は底辺ボカロPでもある。