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コラム 2025年05月08日更新
【結婚の定義コラム・その4】結婚ではないなにか
結婚に似ているけれど、結婚ではないもの。
海外ではそんな制度が増えています。
有名なのがフランスのPACS(連帯市民協約)。もともとは法律婚したくてもできない同性カップルのために導入された制度ですが、法律婚よりも気軽に利用できるとあって異性カップルの利用が激増。2022年には異性カップルの法律婚件数約23万件に対しPACS利用件数約19万件と、法律婚に引けを取らないほどになり、性別関係なしに法律婚ができるようになった現在でも廃れることなく、すっかりフランスに定着しています。
今の日本では、夫婦別姓や同性婚の法制化推進運動など「今ある婚姻制度はしっくりこないから変えよう!」という動きは盛んですが、「今ある婚姻制度はしっくりこないから新しい制度をつくろう!」という動きは目立ちません。
みんな、今ある婚姻制度に基本的には満足しているということなのでしょうか。
それとも、「結婚ではないなにか」という選択肢があり得るだなんて、思ってもみないのでしょうか。
「太陽の塔」で有名な岡本太郎と秘書の敏子は、法律婚できる間柄の成人男女でしたがあえて養子縁組を選んでいました。
あるいは事実婚だったり、もっとオリジナルな共同生活だったり。法律婚に違和感を持ち、利用可能であってもあえてそれを選ばない人たちは、日本でも実は少なくありません。
昨今日本で広がりをみせているいわゆる自治体パートナーシップ制度も、性別や性のあり方にかかわりなく制度利用できる自治体が増えています。たとえば神奈川県横浜市。2025年3月末現在の制度利用者カップル全514組のうち、戸籍等公的書類上異性のカップルは188組と、1/3超を占めています。法的保障が伴わず理念的なものにとどまるといった点でPACSなどとは全く趣旨が異なるものではありますが、それでも婚姻制度に違和感を覚える男女のカップルにも喜ばれているなど、新たなニーズの掘り起こしにつながっているといえるのかもしれません。
そう考えてみると、日本でも「結婚ではないなにか」の需要はそれなりにありそうです。
しかしそもそも、「結婚」と「結婚ではないなにか」の間の線引きって、いったいどこにあるんでしょう?
もっといえばそもそも、フランスと日本の「結婚」が大きく異なるように、「結婚」も1種類だけとは限らないのかもしれません。
日本でたとえばもしPACSのような制度ができたとして、それは「新しい結婚のかたち」なのでしょうか?それとも「結婚に似ているけれど結婚ではないもの」なのでしょうか?
「結婚」って、そもそもいったいなんなのでしょうか?
【文:MEME】1980年生まれ、宮城県出身・在住。アロマンティック(恋愛感情なし)でバイセクシュアル(女も男も性的対象)でノンモノガミー(1対1の性愛関係にとらわれない)でFtX(女として産まれ、性自認が女でも男でもない)。実は底辺ボカロPでもある。