2014年12月11日更新

記録:レコーダ会議(勉強会編)「仙台市博物館学芸室長・樋口智之さんに聞く」中編


10月29日にせんだいメディアテーク7階スタジオの台所にてレコーダ会議の勉強会編として、仙台市博物館学芸室長・樋口智之さんをお迎えしてお話をいただきました。

前編 | 中編 | 後編

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----質疑

レコーダ

資料を買うとおっしゃっていましたが、どこで買うんですか? 向こうから行商みたいに来るんですか?

樋口

ケースバイケースなんですけど、要は「持っている人から買う」ということになります。誰が持ってるのかということで、古美術商が持っていることも多いですし、古本屋さんが持っていることもあるし、個人が持っていることもある。

業者さんが売り込んでくることもよくあります。それから業者さんが作っている目録が送られてきて、「あ、これはいい」と思ってアタックすることもあります。

レコーダ

新しいものを手に入れるためのリサーチはしているんですか?

樋口

そうですね。でも最近予算が少ないし、展覧会事業も忙しくてリサーチが難しい状態です。

レコーダ

寄贈する人がいたらいつでもウェルカムですか? 選別とか基準とかはどう設けているんですか?

樋口

寄贈......これも内容によるんですよね......展示に活用できるかどうか、というのが大きいです。

「こういうものが家にあって、これ寄贈しようと思うんですけど......」と持って来られますよね。これが博物館の展示の中で「この場面で展示できるな」「展示はすぐには出来ないかもしれないけれど研究していくと、ここから広がっていくかもしれないな」「これが直接は生きなくとも、別の資料を展示するための裏付けになる作品だな」と思う時には寄贈していただきます。

レコーダ

最初そんなに期待してなかったけど、何年か後に効いてきた資料なんてありますか?

樋口

あります。寄贈には至りませんでしたが、掛軸を沢山持っているので見てほしい、と持ってきていただいたなかに、「これは!」という良い作品がありました。最初はその位置づけがわからなかった。絵はとても良かったんですが、絵の内容や描いてあることがわからなかった。それがあとになって当館の所蔵品との関係で「これだ」とわかった作品がありました。後になって研究が進むと分かることがあります。この作品の場合、後日お借りして展示させていただきました。また、その参考になった所蔵品も実は寄贈された作品だったんです。この作品も作品自体に価値があったから寄贈していただいたんだけれど、いただいた時には、別の作品の位置づけに役立つとは全然予想もしていなかった。たくさん集まってくると、そういうつながりが出てきます。そういうのが分かる時が、学芸員をやっていて面白い。

レコーダ

博物館は、時代はどこまでフォローしていますか?

樋口

当館は近代までですかね。中心になるのは江戸時代が中心ですが、仙台の歴史、古いところからずっと扱ってますが、仙台の町そのものが伊達政宗が城下町を作ってからのことが分厚いので、当然残っている資料も多い。

レコーダ

それは開館の時、伊達家から寄贈された資料を活用するのが目的だったということが関係しますか?

樋口

たぶんそれが性格付けの大きなところですね。たとえば最初に寄贈いただいたのが近代の絵画のコレクションだったら......。

レコーダ

江戸時代が中心なのは成り立ちからして当然なのですが、そこから広がっていくことはないんでしょうか。時代的にもっと新しいとか。なんか政宗の印象というか、伊達家の印象が強いですよね。岩切城みたいな展示ありますけど、メインは伊達家のだっていう感じがするので。

樋口

可能性はないわけではないと思うんですけどね......どうしても持っている文化財の数や質からすると、伊達家がメインになってしまう。ただ、岩切城とか中世の前の時代のものについても、もちろん面白い展示はしたいと思ってますし、良い文化財がこれから出てくればそういったものも収集の対象にはしてきたいと考えています。別にこだわっているわけではないんですよ。アンテナは張っています。

レコーダ

収蔵している物の管理、複数の資料の関係、結びつきは、スタッフ個々人の知識によるものですか。データベースはありますか?

樋口

データーベース的なものはあっても、それによって資料同士の関連性がわかることはあまりありません。どちらかというとアナログ的なところが大きくて、学芸員の個人個人の研究の蓄積と情報交換ですね。「こういうものが寄贈されました」という時に、私は絵画が専門で絵画的知識で絵画の見方をするけど、工芸担当の学芸員や歴史担当の学芸員はまた別の見方をするわけです。たとえば、ここに字が書いてあったりする、私が字を読めなくてもその歴史担当の学芸員が字を読める、そこに出てきたある特定の人物の重要さに彼は気づくけど、私は全然気づかなかったりする。

そうそう、ひとつ例をあげると、購入資料のなかに仙台藩が作った財産目録みたいのがあったんです。それを購入したのは歴史担当の学芸員なんですが、その目録の中に仙台藩の江戸屋敷で使っていた屏風とか衝立の目録が入っていたんです。それを読み解いていくと面白いのは、我々絵画の学芸員なのですよ。目録に書いてあるこの屏風は、ひょっとしてあの屏風と同じものを指してるんじゃないか?ということに気づくわけです。そういう時にすごく面白さを感じる。

後編につづく


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