2014年12月10日更新

記録:レコーダ会議(勉強会編)「仙台市博物館学芸室長・樋口智之さんに聞く」前編


10月29日にせんだいメディアテーク7階スタジオの台所にてレコーダ会議の勉強会編として、仙台市博物館学芸室長・樋口智之さんをお迎えしてお話をしていただきました。

前編 | 中編 | 後編

3F6A7502.jpg

----博物館の仕事のあらまし

樋口

みなさん、博物館にいらっしゃったことありますか? 今日お持ちした資料に概要が書いてあるので、目を通していただくとあらましがわかります。この資料は、一般の方には配布していません。では、どういう人に渡すかというと、全国から視察に来る人達です。それからもう一つよく使う場面がありまして、それは、展覧会をするために様々なところから作品をお借りするときです。

今、『樹木礼賛』と言う展覧会を開催しています。樹木をテーマにした日本画の展覧会で、関東・関西をふくめ20カ所以上から作品をお借りしています。出品していただくときは、所有者のところに足を運んで「この展覧会をこういう趣旨で開催したいので、そのためにはご所蔵のこの作品がとても必要なのです」ということを伝えて、それでお許しをもらって、初めて出品していただけるものなんです。その時にこの資料を持参して、作品を所有・所蔵する方に「私どもはこういう博物館です」と説明してまず信頼を......といっても簡単に得られるものでもないんですが、名刺代わりにこの資料をお渡しする......そういう使い方です。

さて、資料の最初のページに「博物館の概要」というのがありまして、その真ん中あたりに、仙台市博物館のあらましが書いてあります。「仙台市博物館は昭和36年に仙台伊達家から寄贈された資料群(伊達家寄贈文化財)の保管・展示・研究のために開館しました」とあります。つまり、収集のスタートは、伊達家から寄贈された文化財があり、それを活用するための施設として開館したわけです。全国の博物館や美術館にはそれぞれ様々な始まり方がありますが、仙台市博物館の場合は伊達家の寄贈です。この伊達家寄贈の文化財がどれくらいあったかというと、「当館は1万3千点の伊達家寄贈文化財をはじめ、仙台地方の歴史・文化・美術・工芸資料を中心に約9万点を収蔵しています」とあります。ということは、最初の段階では1万3000点だった資料が、50年間に渡る活動の中で9万点に増えたわけです。どうやって増えてきたかというと、ほとんどは市民の方からの寄贈です。もうひとつは購入による収集です。以前にはだいぶ予算があって作品を購入できたのですが、今はほとんどなくなり、年に1~2点しか買えなくなっています。全国的には購入予算がゼロになってしまった館もあるようですね。それから、収蔵資料の中には、博物館の所有ではなく、博物館が預かっているというものもあります。それは「寄託資料」と呼んでいます。

収蔵資料にはどんなものがあるかというと、たとえば、資料にある「政宗の画像」という絵画、その下には政宗のよろいがあります。これらは伊達家からの寄贈。「萩に鹿図屏風」という、金地の屏風に政宗が和歌を散らし書きしている屏風なんですが、これは購入したものです。あとは支倉常長の肖像画とか政宗書状、工芸品や人形なども含めて様々なジャンルのものが集まっています。博物館なのでこういった歴史的な文化財が多いですが、美術館だったら美術資料が多くなりますし、歴史民俗資料館だったら民俗関係の資料、文学館だったら文学関係となります。

次のページに「展示事業」とあります。ここに「実物資料と利用者との出会いの場になること」と書いてあります。これが当館における展示の基本姿勢です。我々が一番大事にしている「実物資料」、なんでここで「実物資料」と念を押すように言うかというと、博物館によっては模造とかレプリカとかが展示されることがわりとあります。当館は実物資料を展示することを重視しています。また最近では模造やレプリカだけではなく、バーチャルなものが巷にあふれていますから、そういうものを意識しているところもあります。そういったものとは別の役割が我々にはある気がしているので、実物資料とお客さんとの出会いの場を作ることが一つの目標になっています。

展示には、常設展と特別展・企画展というものがあります。常設展というのは博物館で持っている作品・文化財を主に展示するもので、仙台の歴史に基づいて流れに沿って内容も入れ替えながら、常時行っているものです。一方で、特別展・企画展というのは、あるテーマを設けて期間を限定してやる展覧会のことです。例えば、今年の展覧会では「法隆寺 祈りとかたち」「サントリー美術館 おもしろ美術ワンダーランドin東北」「奈良・国宝室生寺の仏たち」そして「樹木礼賛」を開催しました。今年は4本の特別展という大きな規模の展覧会が続きました。昨年は春にアメリカからプライスコレクションというものをお借りして展示しました。それから夏に企画展「仙台藩主勢ぞろい!」これは博物館の所蔵資料を中心に構成した少し規模が小さいものです。あとは、「近江巡礼 祈りの至宝展」や「伊達政宗の夢」という慶長遣欧使節の展覧会。我々学芸員は、こういった展示活動のほか、作品の収集、保管、調査研究を中心に仕事をしています。

中編へつづく


x facebook Youtube