インタビュー 2018年10月22日更新

発案者・篠原章太朗さんインタビュー(2)


自分がつらいときに、どうでもいい、俺は変人なんだー!って感じで歩いたら、変わったんですよ。

ちば:前回は冬だったので、今回は違う季節でもう一回歩いてみようかなと考えています。

篠原:まあ、問題はないと思うんですけど。あと、名古屋で当時やったときのなんですが(資料を見せてもらいながら)自分の世界に入るっていうことが本当に重要なんです。酒は酔って周囲が気にならなくなるための導入剤で。恥ずかしさはあるけど、酒を飲みながら移動をまず噛みしめて、それに集中していると、いつの間にか入ってくるのかな。ちょっと漠然としているのだけど。

ちば:わかります。前回やったときに「他人の目が恥ずかしくて仕方がない」って感想を言っていた子がいたから。歩きはじめているうちに自分の歩幅に意識が向いていって、いつの間にか感覚が開いていった、って言っていて。あ、私も同じだなあって聞いていたんですけど。他者の目っていうのが気になるなあと思いながら篠原さんの話を聞いていたんですけど。人通りがあるところを酒を飲んで昼間に歩く、自分の世界に入るために他者の目は必要だけど、一緒に歩いている側の目はなんというか、雑念というか、邪魔しているものなんだなって。

篠原:たぶん、異質感を出すっていうのが重要なのかなと。夜やったら酔っ払いが歩いているだけなんです。そう考えるとフツーっていうか。やっぱり、違うことをやってみるっていうのが、高揚感じゃないけど、スローウォークの本質に入っていくために必要なのかなって思います。 最初は自分だって恥ずかしいし、でも 30 分もするとあ、どうでもいいやー、そんなことよりも・・・っていう感覚。前に五十嵐先生とやったときの感想があるのですよ。(と、資料をまた見せてくれながら)「いつもの街が外国に・・・」ホントに、的を射てるなって。これは、当時の写真ですね。いろいろ考えたけど、やっぱり文字にするのは難しい。あとは「アルコールの高揚感がプラスされて、五感が研ぎ澄まされていく、雑踏の音も触感もいつもと違って、なんでもないことがキラキラする」っていうようなものが最終的な答えだった、というか、一番いい状態なのかなあという気がします。
たぶん、聞いても漠然とするだけ。だから、私にはまとめきれなくて、続けることができなかったんですよ。いろんな人に「スローウォーク、おもしろい」って言われて、「なんでやったの?」って聞かれると、「いや、漠然とした不安がー」とか言ったら、「いや、そんなの言っちゃだめだよ。そんなのないから。他に何かあるでしょ」って言われて、でも、本当に目的はなくって。今は漠然とした不安はなくなり、就職もして、やる必要がなくなったけど、なんか、あるんですよ。そういう感覚のときがいちばんスッと入れた。
自分がつらいときに、どうでもいい、俺は変人なんだー!って感じで歩いたら、変わったんですよ。背水の陣じゃないけど、それが後押しっていうか、もっと変になれ、もっと変になれ、他人と違うのだー、みたいなね。 ちょっと知恵がついて、街に溶けこむ方法って言ってみたりしたけど、でもそれだけじゃなんか魅力が伝わらないし。

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ポケットウィスキーで再会の乾杯をする篠原さん(左)と門傳さん(右)


じゃあ、止まっていればいいやって話もあるんだけど、なぜかゆっくり歩かないとそうなれない不思議があった。

ちば:きっと、無目的で歩くっていうのが面白かったんですよね。意外と難しいですよね、 無目的に歩くって。気がつくとお茶飲みたいなとか思って、目はカフェ探していて。

篠原:あ、そうそう、そういう感覚が入ってくると、スローウォークには入ってないのかもしれない。イメージでしか話できないですけど。自分がいて、周りにいっぱい人がいて、仙台のアーケードのアーチがあって。それがこう、自分を中心にしてぼやけて一緒に動いている、そういう感覚があったんですよね。
そこで、ほわ~ってなっているときに、他人の歩きの流れっていうのは、信号機によ ってリズムが刻まれていて。当たり前なんだけど、それに気づくと、すごく感動するというか。でもそれは、自分がゆっくり歩かないとわからない。自分が同じようなペ ースで歩けば、そのリズムの中に入ってしまっているので、やっぱり自分が外側にいる感覚があったのですよね。

ちば:外側っておもしろい。

篠原:主体がなくなるっていうのも、なんか。前送った動画を見直すと、面白いと思うのですけど。

白鳥:僕たちがやっているときの、あのおもしろさって、表現できないですよね。だからこそ、記録しようとか、成果物としてなにかこう残さなきゃならないってなったときに、全くこう、見えてこないっていう...

篠原:名古屋のときも、皆にメモ持たせて「どういう感覚がおきましたか」って話して「そういう視点おもしろいな」っていうのしかなかったんですよね。

白鳥:ですよね。

篠原:そういう、言葉が残っていく。「いつもの街が外国にー」みたいなステキな言葉が残せる人だったら良いし。たとえば、電柱と電柱のあいだをずっと考えながら歩いていた人がいて、その線を音楽の楽譜に見立てて、私は音符だって歩いた人もいて、あ、こういう見方もできるんだって。
ホントに酔っぱらってないとバカじゃないか、って思っちゃうけど 実はステキなんですよね。

白鳥:それいいっスよね。

ちば:成果、出ないんじゃない?

篠原:いや。難しいとは思うのですけど、そこをどうするか。 協力はホントにさせてください。なんでも、協力はするので。

白鳥:ありがとうございます。

ちば:ホントですよ。笑

白鳥:先人ですから。

篠原:私にとっても、再考するきっかけになるので。



聞き手:白鳥大樹 千葉里佳
文字起こし:菅野光子


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