報告 2017年02月25日更新

ラジオてつがくカフェ「相馬クロニクル」の作品から「想像力」を問い直す レポート


【開催概要】
日時:2017 年 2 月 25 日(土)15:15-17:45
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
ファシリテーター:辻明典(てつがくカフェ@せんだい)
(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2017/02/58.html


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今回は、音声作品を聴いてから対話を試みました。聴いたのは、以下の3つの音声ドキュメント。いずれも、福島県立相馬高校放送局の制作です。

「緊急時避難準備不要区域より」
福島第一原発の事故直後に設定された緊急時避難準備区域にぎりぎりで入らず、避難は不要とみなされた、南相馬市鹿島区寺内地区に住む方々へのインタビューをもとにした作品。

「Blind」
視覚障害がある方々にとっての、震災の経験にまつわる話。

「Atomic town」
浪江町に住んでいた方々へ、「原発とはどういう存在だったのか?」と訊ねていく作品。

まずは作品を聴いて感じたこと、考えたことを、広く言葉にしてみます。




映像の無い、音声だけの作品だからこそ、「想像力」が働く余地があるのではないか。たとえ一度も会ったことが無い人の声であっても、それを耳にしたとき、その人の顔を思い浮かべることはできる。それは「想像力」の産物ではないのか。「想像力」とは、個人と作品とをつなぐものでは...

また、「限界」が「想像力」を形作るのではないか、という意見も語られました。例えば、自身の過去の経験を、参照することができないとき。過去の経験を、現在の出来事にぴたりと充てがうことができないとき。つまるところ、〈経験の限界〉に遭遇したとき。想像力がはたらきはじめるのは、このようなときではないかと。

さらには、一つ一つの言葉の違いについても。




「想像」と似た言葉として、「妄想」「想定」「思考」「予測」「イメージ」などがあげられますが、それぞれの意味を少々整えていきました。「想定」ができるときや、「予測」ができるときに、「想像力」は動きださないのではないか。「妄想」には、好き勝手に思い浮かべることも含まれるのではないか...

そして、前半の対話をふまえて、「想像力」を考えていく上で「これだけは欠かすことはできない」と思われるキーワードを選び出していきます。

キーワード
・ことば
・ことばにならない(語りえない)...鳥の声など
・想像
・想像力
・感じる
・声
・人間
・経験
・視覚⇔想像・視える・イメージ
・時間

以上のキーワードをふまえた上で、「想像力」の意味を吟味していきました。「想像力」とは、イメージをまとめあげていく力なのではないか。また、「想像力」は、あるプロセスのなかで立ち上がってくるのではないか。自分の理解できる限界を超えて、ものごとを理解しようとしているとき... 自分のなかにはないものと向き合おうとしているとき... または、自分の記憶をコピペするようなものではないか...




そして更に、これまでの対話をふまえた上で、「想像力」の定義をつくりあげていきます。これは、あの場に集った方々との対話を通して、練り上げられた言葉です。

〈定義〉
想像力とは...
・形にしようとする力である。
・一時的に自己に、自分にはないものをあてがうことである。

長丁場となりましたが、粘り強く対話に参加してくださった方々に感謝申し上げます。これからも、じっくりと意味の重心を落とし、対話を通して一つ一つの言葉を丁寧に吟味していきたいと思います。今回参加された方々も、参加叶わなかった方々も、またご参集いただければ幸いです。








*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=13437#report


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