報告 2019年06月03日更新

【レポート】第70回てつがくカフェ「二重のまち/交代地のうたを編む」の映像記録から継承を考える


【開催概要】
日時:2019331日(日)13:00-17:30
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
ファシリテーター:西村高宏、辻明典(てつがくカフェ@せんだい)
ファシリテーショングラフィック:近田真美子、三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)

(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2019/03/69.html

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3がつ11にちをわすれないためにセンター」が企画する「星空と路」の関連イベントとして開かれた第70回目のてつがくカフェでは、2011年より陸前高田で記録を行ってきた小森はるか+瀬尾夏美のアート・ユニットによるプロジェクト「二重のまち/交代地のうたを編む」の映像記録とそこに参加した4人の若者の声から、継承について考えていきました。

同プロジェクトは、あたらしいまちの姿が見え始め、かつてのまちの面影が徐々に遠ざかりつつある20189月の陸前高田において、小森+瀬尾のふたりが、まちの人びとと、遠くの土地からやってきた若い旅人が出会い、会話を重ね、風景を共有するための仮設的な場をつくるものでした。

災害が降り立った土地に赴き、当事者の方々を訪ね、その話に聴き入った、東北の被災地から時間的にも空間的にも、ある距離感を抱いていた4人の若者。その4人が、自身の思いをカメラに向かって語る、1つの映像記録を視聴してから、今回のてつがくカフェは始まりました。

まずは、映像を視聴して感じたこと、考えたことなどを、自由に語り合い、聴き合う時間です。

 <会場からの発言>

作品に映っていた、4人それぞれの語り口、身振りや手振り、言い澱み・・・4人の振る舞いからは、画面に映ってはいない人たちの、言うなれば語りの背景にいる人たちの、気配のようなものを感じた・・・

「どのような話が、震災という出来事を継承していくに値するのだろうか。」と考えていくと、そこにはある「価値判断」が生じてしまう。

「伝える」と「伝わってしまう」ことの間には、違いがあるのではないか・・・「継承」「語り継ぐ」といった言い方との違いは何か・・・?

いくつもの発言が、重なり合いながら繋がり、そして意味を吟味し合いながら、対話は続いていきます。次は、いくつかのキーワードをあげながら、それぞれの言葉を、更に更に掘り下げていきます。

・欲求
・きっかけ
・思い

この3つの言葉には、自分ではコントロールできない、意図を超えたようなものが、込められているのではないか、ということが語られていきます。

・身近
・旅人(旅)
・関係性
・媒体
・誰に対して?
・ギャップ

そして以上の6つの言葉については、人を含めた、何らかの存在との「関係性」が含意されているのではないかと、それぞれの意味を改めて捉え直していきました。

最後は、今回のてつがくカフェのキーワードとなる言葉をもとにして、「継承」の定義をいくつか練り上げていく時間です。5時間という長い間、対話の中で重ねられていった言葉の数々を大切にしながら、最終的には、1つの定義を作り上げました。

継承とは、関わらずにはおれないという欲求から始まり、語る聞くのやりとりの往復を介して、次の想像(創造)への橋渡しをしていく営み。

一方で、今回のてつがくカフェでは、もう少し掘り下げてみたかったキーワードもありました。「"よい"継承とは?」という言葉です。時間の都合上、残念ながら十分には吟味することできませんでしたが、「継承」には何らかの価値判断が入り込んでいるのではないかという問いかけも、今回の対話に通底していたことでした。

5時間という長丁場を、参加者の皆さんと、こんなにもじっくりと、膝を突き合わせて考えられたことは、本当に得難い経験でした。あの場に集った皆さんに、心からの感謝を申し上げます。

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