報告 2020年09月08日更新

第12回映像サロンレポート


2020829日(土)に、東京エレクトロンホール宮城602会議室にて、第12回映像サロン「私が映像を作る理由~その人を知りたいと思う気持ちが映像になる~」が行われました。

8/29(土)開催「第12回映像サロン 私が映像を作る理由~その人を知りたいと思う気持ちが映像になる~」

https://www.smt.jp/projects/cradle/2020/07/82912-1.html

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今回の発表者は、仙台市在住で農業サポーターをしながらドキュメンタリーを作っている佐藤真紀さん。

会の前半では、30代の頃から映画音楽を作るのが夢だったという佐藤さんが、みやぎシネマクラドルを通して吉岡宿にしぴりかの映画祭の映像制作ワークショップに出会い、「私も映画を作りたい」という強い気持ちでドキュメンタリーを作ることになった経緯が話され、ワークショップで生まれた2つの作品が上映されました。

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1本目の上映作品『光の時間』(2018年/834秒)は、受験生なのに勉強もしない、人からどう思われるかも気にしない佐藤さんご自身の次女(当時15歳)に対して、「この子は何を考えているのだろう」という興味から撮られた作品で、参加者はナチュラルな娘さんの姿に一気に引き込まれ、カメラを通して我が子を見つめる母親の距離感に感情移入しながら観た様子でした。

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また2本目の作品『マサさん』(2017年/145秒)は、佐藤さんが初めて人に対してカメラを向けた作品で、彼女の農業サポーターの先輩である阿部マサさんへの興味から撮られた作品です。

本作は2018127日(土)に行われたみやぎシネマクラドルの意見交換会を経て完成した作品ですが、何度上映されても、参加者は阿部さんのお人柄や語り、そしてお仕事をする姿に一気に引き込まれていく様子でした。またこの日会場に訪れてくれた阿部さんからもご挨拶をいただき、撮影をお願いされたときの気持ちなどもお話しいただきました。

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後半では、佐藤さんが現在制作している30分の新作ドキュメンタリーをより良くするための意見交換会が行われました。新作は今回上映した短編2作品と異なり、一人の人物の魅力というよりも地域の歴史やつながりといったものにクローズアップした作品なのですが、より広い視野と複雑な構成が求められるだけに、物事を深める視点やそれを表現するための技術が追い付いていない佐藤さんの現状が参加者のさまざまな意見から浮き彫りになりました。

とくに映像を観進めていく上で前提となる情報の提示が曖昧で、参加者からは「どのように観て行けば良いのか分からず戸惑いを感じる」「いろんな人が出てきても感情移入できない」「佐藤さん自身の何を伝えたいか、何を描きたいかという強い姿勢があまり感じられない」といった厳しい声も上がりました。過去2作品が佐藤さんと近しい人との関係性を瑞々しく捉えたところが魅力だっただけに、今回の新作上映では知らない世界を知ろうとする佐藤さんの今後の課題が相対的に、鮮明に見えてきたようでした。

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一方で、佐藤さんの被写体にぶつかっていく勇気や、厳しい意見も素直に受け止め、取り入れようとする愚直さに多くの参加者が心を打たれたのも間違いありません。いずれにしても、佐藤真紀さんという一人の映像作家のこれからについて、参加者みんなが大きな期待を膨らませ、新作の完成についても多くの期待を寄せて忌憚の無い意見が交わされ、みやぎシネマクラドルらしい、有意義な会となりました。

コロナ禍でいろいろな催しが制限される中での会でしたが、久しぶりに会員同士顔を合わせて語り合うことの重要性を再認識するとともに、このようなささやかな取り組みを楽しみに待っててくださる市民の方々の温かい応援を実感できる時間でもありました。

そんな感じで、シネマクラドルは新型コロナ感染拡大防止に努めながら、これからも映像サロンを地道に続けて行きたいと思っております。みなさま、今後もどうぞよろしくお願いいたします!(代表・我妻)


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