報告 2019年01月16日更新

細倉を記録した寺崎英子の写真アーカイブ:8回活動レポート


2か月におよぶ「細倉を記録した寺崎英子のまなざし展 カラー編1227日に終了しました。期間半ばに開催したギャラリートーク「ひとびとの細倉・寺崎英子と私」について書きたいと思います。

「昨年のモノクロ編に引き続き、2回目となるカラー編の写真の展示を見て下さった方たちはどんな感想をもっているのだろう。それを直接、聞いてみたい。」
そんな思いがあり、ギャラリートークは、誰かが一方的に話をするのではなく、参加者の皆さんと写真を見ながら、自由な感想を話し合うこととし、進行役はこの展示の責任者である小岩勉さんが担当することになりました。私たちの予想を超え30名以上の方が集まって下さり、椅子を追加するという、うれしい状況でギャラリートークは始まりました。

初めに、英子さんとの出会いから、メディアテークでの写真展示開催となったいきさつを、小岩さんが語られました。
結果的に直接会うのが最後となった細倉のご自宅訪問の際、「寺崎英子の名前の入った写真集をつくってほしい」といって、突然、渡された大量のネガフィルム。預けられたものの、なかなかうまく進まない写真集出版への道筋。当時、お元気だった英子さんからの状況を問う電話。メディアテークでの展示決定で動き出した状況を伝えることができないまま知った英子さんの死とその衝撃。
聞いておけばよかったと思う多くの疑問と後悔を抱えつつも、英子さんの遺志に背中を押され、なんとしても写真集の出版までたどり着かねば、という小岩さんの今の思いを強く感じました。英子さんが細倉の写真を撮り始めた80年代後半の出会いから、小岩さんがネガを託された2015年の秋の終わりの約30年の間にふたりが直接会ったのはわずか数回という事実に驚かれた人も多かったようです。

参加者は、英子さんの弟さんたちとそのご家族、細倉に関わりを持つ方、昨年の展示をみて、また来てくださった方、夏に細倉マインパークで開催した巡回展をご覧になり興味を持って下さった方、新聞掲載の記事をみて、ぜひ行ってみなければ、と思ったという方などさまざまで、前回より層の広がりを感じました。

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鉱山の閉山を記録するための報道写真でなく、プロが狙って撮った迫力ある「上手い(うまい)」写真でもない。幼い姪たちの成長をみつけるまなざしや近所のひとたちと話しながら撮っているような個人的な視点でとらえた細倉。人がいなくなった後の地に育つ植物。
「これらの写真はねえ、英子さん自身なんだよ。見慣れた風景、よく知っている人たちと話しながら撮ってるという感じ。「生活」がそこに写ってる。撮ろうとして撮れる写真じゃない。撮りたいねえ、こんな写真。撮れないなあ・・・」ご自身も地域で写真を撮っておられるという方の言葉が印象的でした。
また、「鉱山というのは閉じたところなんですよ。大半が鉱山で働く人とその家族でしょ。長屋の暮らしはほぼみんな同じ。ほとんどが鉱山で仕事してるか、ヤマに関係してる。収入もだいたい同じ。境遇が似てて助け合って暮らしてるから、一体感があるんだ。町全体で生活を共有してる」秋田の鉱山にいたという方の話は、細倉で暮らした英子さんと写っている方たちとの距離の近さの理由を言い当てていると感じました。

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最盛期人口13千人を数え、小学校が40クラス、宮城県一のマンモス校だったという、細倉の町。閉山が決まり、40代の英子さんが小さな体で慣れないカメラを手にして撮り続けたのは、彼女自身が暮らしてきた大きな町が消滅していく様子ですが、彼女が残しておきたかったのは、かつてあった町の記録のみならず、彼女自身がその中にいた生活の記憶、見てきたものの記憶だったのではないでしょうか。
英子さんの写真をみて多くの人が「懐かしいかんじ」「泣けてくるかんじ」がする、といいます。そこに写っている昭和の時代の空気感は、その時間を生きた人であれば、場所を問わず、多くのひとが体験してきたものなのでしょう。寺崎英子撮影の細倉の写真の中にそれぞれが自分の時間を見つめているのかもしれません。参加者の皆さんとそういう時間を共有できたことはとても意味深いものだったとあらためて思います。

ご参加いただいた方々、本当にありがとうございました。

 
文・鈴木 まどか
活動日:2018年12月9日

【展示風景】
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FV1A9751s.jpgのサムネイル画像
FV1A9808s.jpg FV1A9776.jpgのサムネイル画像
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今回の展示を見て下さった栗原の方のご厚意により、下記の日程での巡回展示が決まりました。

「第12回栗原市写真展〜ふるさと再発見〜」同時開催
特別企画展「細倉を記録した寺崎英子のまなざし展」
会場:栗原文化会館(栗原市築館高田2丁目1-10)
会期:2019年2月23(土)〜3月2日(土)9:00~17:00 入場無料 *月曜休館
問い合わせ:栗原市教育委員会社会教育課 Tel. 0228-42-3514


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