みやぎ民話の会「民話 声の図書室」プロジェクトチームが、2011年3月11日の大津波で大きな被害をこうむった宮城県内の沿岸集落でかつて聞いた話から、小野和子が10話程度を選んで紹介するシリーズ展です。第7回目となる今回は、牡鹿郡女川町周辺で聞いた10話のほか、過去に紹介した6地域の浜の民話と、アーティストの瀬尾夏美が女川の語り手の元を訪ねて聞いた話、映像作家の福原悠介が撮影した女川の映像作品を展示しました。
(展覧会あいさつ文より)
「民話 声の図書室」プロジェクトは、これまで「みやぎ民話の会」が記録してきた民話語りの映像・音声を、誰もが活かせる共有財産として、後の世代に手渡していくことを目指し、2012年よりせんだいメディアテークと協力して活動しています。
この展示は、その活動の一環として開かれるもので、2011年3月11日の大津波で大きな被害をこうむった宮城県内の沿岸集落でかつて聞いた話を紹介するシリーズ展です。
第7回目となる本展は、女川町周辺で語られた民話を中心に構成されています。また、「民話 声の図書室」プロジェクトに関わってきた映像作家の福原悠介が、女川町周辺の風景を集めて制作した映像作品と、アーティストの瀬尾夏美による民話の語り手へのインタビュー、そして、これまでに展示された沿岸各地の民話も展示いたします。
それぞれのお話はお手にとってお読みいただけますので、ぜひごゆっくりお過ごしください。
せんだいメディアテーク
会期:2019年7月6日(土)〜9月1日(日)9:00〜22:00
会場:せんだいメディアテーク 7Fラウンジ
※7月25日(木)、8月22日(木)は休館日
観覧無料
全10話の記録:小野和子(みやぎ民話の会「民話 声の図書室」プロジェクトチーム)
女川の写真:小田嶋利江(みやぎ民話の会「民話 声の図書室」プロジェクトチーム)
安倍ことみさんのインタビューテキスト:瀬尾夏美(アーティスト)
女川の映像:福原悠介(映像作家)
イラスト:澁谷夏海
展示ディレクション:瀬尾夏美
主催:みやぎ民話の会「民話 声の図書室」プロジェクトチーム/せんだいメディアテーク
お問い合せ:022-713-4483(せんだいメディアテーク)
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▽会場の様子(クリックで拡大します)
▼かつて牡鹿郡女川町周辺で聞いた いいつたえ むかしばなし はなし
(全10話の記録:小野和子、写真:小田嶋利江)
▼女川の映像作品(制作:福原悠介)
▼展示をした映像をご覧頂けます
▼閲覧コーナー
▼安倍ことみさんの語り(2019年6月収録、記録:瀬尾夏美)
安倍ことみさん:石巻市河北町で生まれ、祖母に民話を聞いて育つ。女川に嫁ぎ、老人会や学校で民話語りを始める。東日本大震災で自宅を流出。現在は、公営住宅に暮らしながら、民話の活動を続けている。
▼浜の民話伝言板(上)と感想ノート(下)
▼関連資料
▼「民話 声の図書室」プロジェクト紹介
▼みやぎ民話の会資料集(左)とみやぎ民話の会叢書(右)
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▽「2011.3.11 大津波に襲われた沿岸集落で、かつて聞いた《いいつたえ、むかしばなし、はなし》 -その七-」の展示パネル
(クリックで拡大します)
▼かつて牡鹿郡女川町周辺で聞いた いいつたえ むかしばなし はなし
(全10話の記録:小野和子)
第一話 野猿の群れ |
第二話 カラスの恩返し |
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第三話 ウドンゲの花 |
第四話 もうれん舟(幽霊舟) |
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第五話 流れてきた死体 |
第六話 銀蔵キツネとおばあさん |
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第七話 風呂は肥溜め |
第八話 キツネが負ぶさってくる |
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第九話 沼のキツネ |
第十話 屁ったれの屁之丞 |
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▼展覧会に寄せられた感想など(伝言板、感想ノートより抜粋)
- 漁師さんの桶の話。キツネとの知恵くらべ。くらしや その時代(飢きん)の中でのおはなし。そして残された地名。旅行者ですが 地元のことをもっとしりたくなりました。
- 昔は死人とも キツネとも いろんなものと仲良く暮らしていたんだよねぇ。
- 村の外から来るものがどのように扱われていたか?異質なものにどう対処していたのかを思いをめぐらせました。蛇に孕まされた娘が堕す話。蛇の嫁から逃げて助かる話。助からない話。背景にどんな事実があったのだろうと考えます。
- 民話は、生と死、動物が昔は近く(密接)にあったと思いましたが、じゃあ、いまの時代はそのようなことが感じられるのか?と思うと、昔と今、どちらが心や感性が豊かなのかとふとギモンに。
- 戦災復興記念館で女川空襲の展示を見た直後にこれを見たので、いろんなことを考えさせられました。戦争も民話も津波も復興も全部同じ場所で起きているんだなと思うと、現実と空想の境目がわからなくなってきます。
- 浜のお話なので海に関することばかりかと思っていたら、田んぼの天水の話や、キツネに化かされる話などもあり、浜の暮らしが海の仕事ばかりで成りたっているのではないことを感じさせられました。
- 女川出身者でも知らない話や、逆に祖母や近所のお世話になった方々を思い出しました。この浜の世界観(キツネ、カラス、死者)は南米のガルシア・マルケスの小説の世界観にも通じるような独特の信仰があって、改めて興味を持ちました。
- 3.11の被災地、女川や雄勝に行って復興に取り組んでいらっしゃる皆さんにお会いしてきましたが、民話集を読んで、人間と自然、海や生き物たちとの共生関係をあらためて大切に思います。人々の苦しみや優しさにも涙したり、思わず口元がゆるんだり、時を忘れさせてくれた民話集の展示です。