報告 2014年02月15日更新

第3回ヤングファーマー農宴「TPPと農業」レポート


【開催概要】
日時:2014 年 2 月 15 日(土)15:00-17:00
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
(参考:https://www.smt.jp/projects/nouen/2014/02/3tpp.html


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宮城県内の若手農家団体4HCのメンバーがホストとなり、参加者の皆さんと農業のことについてお互いの考えや意見交換をし、明日の食と農業について考えていこうという企画。ヤングファーマー農宴~おらとあんだとくいもんと~の第3回が開催されました!今回のテーマは『TPPと農業』です

サムネイル

左:菅原達徳さん、中:私(大槻雄一郎)、右;齋藤彰人さん

今回はTPPというテーマを設けた手前。我々も入念な打ち合わせやTPPに関する知識や情報を勉強し、ゲストヤングファーマーも今までとは違い、より多くの若手農家の参加で25年度の最後を締めくくるのに万全の態勢で臨みました。

第2回から日にちが近かったこともあり、こちらの準備も大変なところもあったのですが、第2回の成功に胡坐をかかず、今回もしっかりと参加者の皆様と有意義で実りある時間を共有するぞという意志に燃えていました!そして、しっかりと準備をして臨んだ第3回当日。

予測不能の事態が発生。先週に続き今回も大雪に見舞われ、来る予定のゲストヤングファーマーも大半が来れないという緊急事態が!!公共交通機関が止まってしまって来れない方や、近所や家の雪かきに追われる方、家のハウスが雪でつぶされそうになりそうな方など、かなり大変な事態。私自身も家の雪かきをして雪害対策をして仙台へ向かいましたが、吹きすさぶ風雪に圧雪で轍にハンドルを取られる道中をなんとかメディアテークへ

そんな悪天候にも負けず今回は4HCの会長である斎藤彰人さん、そして第1回「有機栽培と慣行栽培」ゲストの菅原達徳さんが参加してくれました。

ありがとうございます!

お客さんに入りはあまり期待できそうにないなぁと話していましたが、今回はそんな天気にも負けずになんと28人ものお客さんがヤングファーマー農宴に足を運んでくださいました。

そんなこんなで始まった第3回「TPPと農業」

当初予定していた形はゲストヤングファーマーの齋藤彰人さんと複数ゲストでイベントを進めていく予定だったのですが、急きょ私と菅原達徳さんにもゲストとしてイベント進行に参加。さらに今回の司会もいつもは頼れる先輩にやっていただいていたのですが、私が行うことになりました。

そしてテーブルもいつもとは違い大きな円のようにみんなで一つのテーブルに座して行い参加者との距離を縮め、より対話という部分に重点を置くようにスタイルをがらりと変えました。

何より、このような事態も想定して自分自身も準備をしてきたのですが、いきなりの大役でとても緊張しました。

写真1

今回でも大きく3つのトピックを立ててイベントを進行していきました。

① TPPについての基礎知識

として、まず我々としても異業種の方がTPPについてどのような認識なのか知りたいという事もあり、参加者の方と意見を交わしました。

私自身も今回このテーマを行うにあたり、いろいろとTPPについて調べてみたところ、TPPは農業のだけの問題ではなく、参加12か国での共通のルールを作る枠組みの事をTPPと言い、全部で21の分野で今議論されており、その21の分野のひとつの「物品市場アクセス」という部分が関税の撤廃に関わる事項で、TPPの本質は農業問題だけではないというのがわかりました。また、今回のテーマが「TPPと農業」なので参加してくださった方の多くからは、TPPに参加したら関税が撤廃されて日本の農業が大変なことになるのではないかと心配する声も多く聞かれました。

次に

② TPPでもたらされる影響

という事で、まずは今問題されている守るべき国益という事で主要5品目(米、麦、牛、豚、乳製品)の関税の維持、食の安心安全などについて話しました。

TPPは共通のルールを作るわけですから日本では使えない食品添加物や農薬が、例えば「A国では使えるから、日本でもOKだ」というように規制が緩和されることで、食の安心安全という部分は本当に守られるのか、という疑問が湧いてきます。その点に関して、登米市の有機栽培農家の菅原達徳さんにお話ししていただきました。

彼はこの先、いくら価格が安いからといっても、食の安心安全が守られていないものを食べたとき、今まで以上に病気の人が増えるんではないかと危惧していました。

また、海外から安価な農産物が入ってくることで、国内で大量栽培などができない農家は価格競争に勝てず、離農者が増え、耕作放棄地が増え、その結果、景観が損なわれてしまう。田んぼの多面的機能が失われるといった影響もあるという話もでました。

次に

③ TPPに向けての対策

というトピックでは大崎市の米農家の齋藤彰人さんが、今後の営農計画についてお話しました。齋藤さんからは、関税撤廃で安い農産物が入ってくる分、こちらも輸出するチャンスがあるという事。

よく海外の富裕層に売り込むといった話が出るが、彰人さんが考えているのはTPP参加国でもあるシンガポールに売り込むという話で、実際今シンガポールでは日本企業が多く進出していて、多くの日本人もそこに住んでいるという事。そこに輸出のチャンスがあると話していました。

見方を変えれば国内だけではなく海外に目を向けることもできるのだなぁと感じましたし、同じ宮城県の若手農家でもTPPに対しては賛否両論あることが目の前で見えることで、僕らがこの問題にどのように向き合い、考え続けているのかが伝わったのではないかと思います。

写真3

最後に今回の感想として参加者から「TPPについては不安が残るが、若手農家の皆さんの考えが聞けて良かった」、「基準が変わることによって今後は消費者にも食べ物を選ぶ責任が伴い、一人一ひとりがしっかりとした目を持って今まで以上に食べ物のことを考えていきたい」といった意見が聞けました。

また、TPPに対する対策というのも、こういったイベント自体が対策になるという話もいただき、企画したものとしても大変うれしい気持ちになりました。

今回、予想外のアクシデントとはいえ、何とか形になったのも、詰まりそうになったときすかさずフォローを入れてくれた齋藤彰人さん、そしてマイクをもって話し始めただけで会場全体に笑いが起こり、和やかな雰囲気を作り出してくれた菅原達徳さん。二人の存在にたくさん助けられ2時間無事にイベントを終えることができました。ありがとうございました!

TPPという事柄について私自身は、我々日本人が改めて農業や食について考えるひとつの大きな機会だと思います。

もちろん不安な部分も多々あります。

ですが一人ひとりがその内容についてしっかりとした考えを持つことが大事なんじゃないかなぁと感じました。

最後に、今回は悪天候にも関わらず来ていただいたお客様に心から感謝したいと思います。

今回はベストな状態ではなかったので、いつの日かさらに準備を重ねベストな状態でまたTPPの事についてヤングファーマー農宴を開催したいと思います。

来年度もヤングファーマー農宴をよろしくお願いします!!

報告:大槻 雄一郎(ヤングファーマー農宴)





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=5907#report


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