報告 2021年10月08日更新

【報告】手話による読み聞かせボランティア養成講座(第5回)



せんだいメディアテークと仙台市民図書館では、聞こえない子どもたちに絵本の読み聞かせを楽しんでもらえるよう、手話で読み聞かせをおこなう「手ではなすおはなしの会」を定期的に開催しています。読み聞かせは、ボランティアグループ「まほうの手」がおこなっています。
今年度は、「まほうの手」として活動する新しいメンバーを養成するための連続講座(全5回)を開催します。受講生は、9月23日(木・祝)の「手話言語の国際デー」に開催するおはなしの会での読み聞かせデビューを目指し、手話の読み聞かせに必要な知識や技術を学びます。
全5回の講座から9月のおはなしの会まで、その様子をレポートしていきます。


2021年9月5日(日)に「手話による読み聞かせボランティア養成講座」の第5回を開催しました。

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5回目となる今回の講座では、本番に向けての最終確認ということで、受講生が特に確認したいところを中心に進めました。最初の講座とは見違えるようにみなさん上達していますが、それでも手話文法独自の表現に苦労している受講生も多いようでした。

絵本『スイミー』(作:レオ・レオニ、翻訳:谷川俊太郎、出版:好学社出版)を読む受講生と池田先生とのやりとりの中で、「昆布とワカメのCL※やNM※は違います。どのように違うでしょうか?」という質問が出たりしました。(みなさんはわかりますか?表現の一例はこの記事の最後にあります)

CL(シーエル)とは
手の形や動きによって対象物の形や大きさなどを表すこと

NM(エヌエム)とは
日本手話の文法的な役割を果たす手指以外の動き。
うなずきや首振り、目の開き方や眉の上げ下げ、あごの動きなどがある。

普段から聞こえない子どもたちの前でたくさんの絵本を読み聞かせしている池田先生の細かい観察眼に、受講生だけではなく、スタッフ一同も驚きの連続でした。

今回も、池田先生から絵本『かける』(作:はらぺこめがね、出版社:佼成出版社)の読み聞かせをお手本で披露していただきました。

この絵本は、さまざまな食べものを「かける」シーンがたくさん出てきます。どの食べものもとてもおいしそうに描かれているため、読むとおなかがすいてしまう作品です。今回も、絵本の作者であるはらぺこめがねさんと佼成出版社、読み手の池田先生に許可をいただき、特別に手話による読み聞かせの動画をみなさんに見ていただけることとなりました。

これまで紹介した、日本手話文法の基本であるCLNMの表現がたくさんふくまれています。おいしそうな絵と、その擬音語をユニークに表現する池田先生の手話にご注目ください。



講座の最後には、受講生一人一人に感想と「手ではなすおはなしの会」に向けての意気込みを話してもらいました。いよいよ、923日(日)は本番となります。みなさん2ヶ月以上にわたり、たくさん練習をしてきたので、その成果を本番で発揮できるよう、スタッフも全力でサポートできればと思います。


【答え】昆布とワカメのCLNMの違い
昆布とワカメはその形だけでなく、固さに違いがあることにも着目して表現します。厚みのある昆布は、形や高さや厚みをCLで表現しつつ、口を閉じるNMでその固さを表現します。一方、やわらかいワカメは、指先をゆっくり動かすCLで表現しつつ、口をすこし開くNMでそのやわらかさや薄さを表現します。
※表現は一つではないので、一例として紹介しています

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参考文献
NPOバイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター編
岡典栄・赤堀仁美(2011)『文法が基礎からわかる 日本手話のしくみ』大修館書店
松岡和美(2015)『日本手話で学ぶ 手話言語学の基礎』くろしお出版


⇒9/23「手ではなすおはなしの会2021・秋」の報告ブログはこちら




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