報告 2021年10月08日更新

【報告】手話による読み聞かせボランティア養成講座(第4回)



せんだいメディアテークと仙台市民図書館では、聞こえない子どもたちに絵本の読み聞かせを楽しんでもらえるよう、手話で読み聞かせをおこなう「手ではなすおはなしの会」を定期的に開催しています。読み聞かせは、ボランティアグループ「まほうの手」がおこなっています。
今年度は、「まほうの手」として活動する新しいメンバーを養成するための連続講座(全5回)を開催します。受講生は、9月23日(木・祝)の「手話言語の国際デー」に開催するおはなしの会での読み聞かせデビューを目指し、手話の読み聞かせに必要な知識や技術を学びます。
全5回の講座から9月のおはなしの会まで、その様子をレポートしていきます。


2021年8月22日(日)に「手話による読み聞かせボランティア養成講座」の第4回を開催しました。

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4回目となる今回の講座では、前回と同様、受講生が一人ずつ読み聞かせをしたあと、池田先生からアドバイスを受ける11のレッスンを行いました。講座も4回目ということで、読み聞かせに慣れてきた受講生が多い一方で、池田先生からは「ここの動きはもっとゆっくりのほうが良い」「ここは少し間を空けてほしい」など、一定の速さで読み聞かせをするのではなく、場面に応じてスピードに緩急をつけ、メリハリをつけるようアドバイスがありました。

例えば、絵本『いやだいやだ』(作:せなけいこ、出版:福音館書店)では、主人公のルルちゃんが、なんでも「いやだいやだ」と言ううちに、おやつのケーキとリンゴが走り出してしまう場面があります。

ケーキ走る.png

この場面を手話で読み聞かせする場合、まず「ルルちゃんがおやつを食べようとする」、次に「おやつが『いやだ』と言って走り出す」という流れで表現しますが、受講生から「ルルちゃんの視点とおやつの視点の切り替えを表現するのが難しい」という相談がありました。そこで、池田先生は「その動作はルルちゃんがしているのか、おやつがしているのか、はっきり分けることが大事」とアドバイス。具体的には、ルルちゃんの視点からおやつの視点にすぐ切り替えるのではなく、間(ま)をとるように意識すること、また、ルルちゃんの表情とおやつの表情をはっきり切り替えることで、どちらの視点かがよりわかりやすくなるといいます。

ケーキを食べるルル.png
おやつを食べようとするルルちゃん(目を見開く)

断るケーキ.png
「いやだ」と言って断るおやつ(眉をひそめる)

この場面のように、一人の話者が複数人の考えや行動を示すときに用いる表現をRS(ロールシフト、もしくはレファレンシャルシフト/Role Shift,Referential Shiftの略)といい、体の向きや目線、表情を使って表現します。普段の会話の中でもよく使われていますが、いろいろなキャラクターが登場する絵本を読み聞かせするうえでも欠かせない表現です。

他の受講生が選んだ絵本『十二支のはじまり』(文:岩崎京子、画:二俣英五郎、出版:教育画劇)でも、RSが使われる場面が出てきます。物語の冒頭、ネズミとネコの二匹が話す場面では、視線の変化や頭の動きなどで、話し手が切り替わるのを表現していました。

ねずみ「1月2日」.png
ネズミが話すときは視線と頭が上側に向く

ねこ2.png
ネコが話すときは視線と頭が下側に向く

ネズミはネコよりも小さいので、ネコを見上げるように視線と頭が上側に向き、ネコはネズミよりも大きいので、ネズミを見下ろすように視線と頭が下側に向きます。

講座の最後には、池田先生から絵本『ばけばけばけばけ ばけたくん』(文・絵:岩田明子、出版:大日本図書)の読み聞かせをお手本で披露していただきました。

この絵本は、食べものが大好きなおばけのばけたくんが、いろいろなものを食べて変化する、とてもユニークな絵本です。今回は、絵本の作者である岩田明子さんと、出版社である大日本図書と、読み手の池田先生に許可をいただき、特別に手話による読み聞かせの動画をみなさんに見ていただけることとなりました。(2022年の331日までの期間限定公開となります)



次回、第5回目の講座は95日(日)におこなわれます。あっという間に最後の講座となります。本番の「手ではなすおはなしの会」に向け、受講生のみなさんと頑張っていきます。

次回も、このブログで講座の様子をお伝えします。どうぞお楽しみに!

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参考文献
NPOバイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター編
岡典栄・赤堀仁美(2011)『文法が基礎からわかる 日本手話のしくみ』大修館書店
松岡和美(2015)『日本手話で学ぶ 手話言語学の基礎』くろしお出版

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