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プロジェクトリスト | 失われた村の風景を記憶しなおす

2020年05月06日更新 報告 【記録① 全景〜水落切】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-

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2019年10月25日(土)から1月5日(日)にかけて、せんだいメディアテーク7階ラウンジにて、展覧会「黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-」を行いました。

宮城県黒川郡大和町(たいわちょう)の升沢(ますざわ)地区は、1990年代末に日米軍事演習を契機に集団移転がなされましたが、この当時、村のくらし全般を対象とした記録保存調査に参加していた手代木信成氏が、移転前後の村の人々や自然の風景を撮影していました。  

今回の展示では、プロジェクトの企画者で升沢の民俗調査に参加していた小田嶋利江氏が、手代木氏の撮影した約3000枚のフィルムの中から、村の人々の暮らしや自然の風景の写真約300点を選び、各写真にまつわる「記録者の言葉」と「土地の人から聞いた言葉」を添えて紹介しました。


▽開催概要

会期 2019年10月25日(金)〜2020年1月5日(日)

   ※11月28日(木)は休館、12月29日(日)から1月3日(金)は年末年始休館

会場 せんだいメディアテーク 7階ラウンジ

主催 「失われた村の風景を記憶しなおす」プロジェクト

   せんだいメディアテーク(公益財団法人仙台市市民文化事業団)

助成  一般財団法人 地域創造


URL:https://www.smt.jp/projects/masuzawa/2019/10/nariwai.html

▽制作協力

展示デザインプランニング:川村智美

チラシ・ロゴデザイン:根朋子

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展覧会 挨拶文より

 いま、宮城県黒川郡大和町升沢地区には、集落としての姿はない。  

 しかし、かつてここには、船形山への登山口となる最奥の村があった。藩政時代、出羽へ抜ける街道の関所として藩の御番所が置かれ、近代は薪炭などの山林資源の供給地となり、戦後は用材の伐り出しでにぎわい、いまは船形山登山口として登山者に親しまれている。かつての村は、船形連峰の広大な自然に抱かれ、山間集落のくらしの伝承をとどめていた。村に鎮座する船形山神社の古風な作神祭りは、かつては郡域をこえた多くの参詣者でにぎわった。  

 1996年(平成8)、升沢地区に隣接する陸上自衛隊 王城寺原演習場が、沖縄米軍の実弾射撃訓練を受け入れ、その砲撃音などの補償として、1997年から升沢地区集団移転事業が開始された。2000年には村人はすべて、家を解体し土地を更地にして、麓の三峰地区に集団移転した。  

 そんななか、1999年から2003年まで、大和町と東北民俗の会*の共同で、升沢地区の民俗全般を対象にした記録保存調査が行われた。その調査に参加していた手代木信成氏は、移転前後の村の人々のくらしや自然の風景などを多くの写真として記録した。その中の一部は報告書『升沢にくらす--集団移転に伴う民俗調査報告書--』(2003 東北民俗の会・宮城県大和町教育委員会)に収録されたが、その他多くの調査時の写真は、未公開のまま手代木氏の手元に保存されていた。  

 当プロジェクトは、これらの写真約3000枚をデジタル化し、各写真を軸に、撮影内容・状況・背景・周辺のエピソードなど、撮影者や関係者からの情報を立体的にまとめることを目的とする。その活動は、写真を介した村の再記憶となり、その成果は村への記憶の窓ともなるのではないだろうか。  

 本展では、升沢の記録保存調査に参加していた手代木信成氏が撮影した移転前後の村の人々のくらしや自然の風景の写真を、村に生きた人々から聞いた言葉とともに紹介します。  

 本展開催にあたりご協力をいただいた大和町教育委員会、東北民俗の会には、この場を借りて感謝申し上げます。  

 失われた最奥の村の風景を記憶の窓とし、かつてあった山に向き合う村の人々のくらしを思って... 

「失われた村の風景を記憶しなおす」プロジェクトチーム  小田嶋 利江

*東北民俗の会...1960年(昭和35)に、宗教学者である堀一郎を初代会長として発足した  東北地方の民間民俗学研究団体。

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【展示をご覧になるにあたって】

◇本展で公開している写真はすべて、大和町升沢地区民俗調査において、1999年より2003年までに、東北民俗の会 升沢調査会の手代木信成氏により撮影されたものである。そのうち旧升沢住民などの所蔵写真の接写には、その旨の注記を付した。

◇展示にあたっては、升沢のくらし全体において骨格をなす視点と事柄を抜き出し、それらを二十一の節とし、節の言葉の内実となる、さらにそれと親和し共鳴する写真を選んで配置した。

◇各節の解説および〈土地の人の言葉〉は、升沢調査の報告書『升沢にくらす--集団移転に伴う民俗調査報告書』(2003 東北民俗の会編 大和町教育委員会刊)の記述にもとづき、升沢調査会に参加した小田嶋利江が作成した。なお一部に『升沢にくらす』に盛り込めなかった調査資料による記述をふくむ。

◇したがって各節の解説は、とくに年代の記述がない場合、調査時の話者たちがじかに体感した昭和初期から戦後高度経済成長期までのくらしの聞き書きにもとづいている。

◇すなわち、2000年代初頭の記録写真と、昭和前半期の記憶を核とする聞き書きにもとづく解説・〈土地の人の言葉〉とには、重なりあいながらも、そのあいだにいくつもの記憶の層がはさみこまれている。写真の風景を窓として、変わったこと、変わらないこと、消え去ったこと、残っていることなど、記憶の層という土地の歴史を想起していただければ幸いである。

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升沢へ "水落切"を越えて

 黒川郡大和町は、宮城県のほぼ中央に位置し、翅を広げた蝶のように中央が狭くつぼんだ東西に横長の形をしている。東部は広い水田地帯が見はらせる平地が広が り、西部は山形との県境となっている船形連峰の山稜から山麓が裾をひいている。  

 その大和町のつぼんだ翅の付け根に位置する吉岡の町から県道147号桝沢(ますざわ)吉岡線 を西へたどると、沢渡を最後の集落として、すぐに急勾配でのぼる山岳道路となる。 やがて長者館山(ちょうじゃだてやま)の風早峠(かざはやとうげ)を越え、道は荒川両岸の河岸段丘をたどって、船形山登山口の旗坂野営場までのぼりながら続いている。  

 かつて、最奥の集落は沢渡ではなく、風早峠の手前に嘉太神(かたいじん)、峠を越えた荒川沿いには下原・新田・種沢・升沢(あわせて升沢地区)の山間集落があった。升沢地区も嘉太神地区も村をあげて移転し、いまはかつての集落の姿はない。  

 升沢への道をたどるとき風早峠は「分水嶺」となる。風早峠の手前にあった嘉太 神地区は北泉ヶ岳北麓に発する吉田川の左岸に位置し、一方峠を越えてたどる升沢 地区は船形山東麓を源流とする荒川の左右河岸段丘上に散在している。つまり吉田川も荒川も大きくは鳴瀬川水系でありつつ、上中流域は船形連峰の異なる谷筋をたどって、それぞれ大和町と色麻町を流れ下る。  

 升沢の集落は、風早峠を越えた荒川流域にくらしを営んできたため、歴史的には加美郡色麻(かみぐんしかま)と、荒川を介した通商や通婚によって結びついてきた。黒川郡吉岡との強い結びつきは、戦後王城寺原演習場の拡張により、色麻への道が閉ざされてからのものだという。  

 

天から降った雨が山脈の稜線で切り分けられて両側に流れ落ち、それぞれ異なる 沢筋を流れ下り、同じ沢面に降る雨水を集めて異なる川の本流へと導かれる。その 切り分ける山の峰、分水嶺を古くは「水落切(みずおちきり)」と呼んだ。升沢は里の集落からはるか へだたり、「水落切」をこえた最奥のムラだったといえよう。

▽ボード写真 クリックで拡大します

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▽升沢手書き地図 クリックで拡大します

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展覧会の記録は下記のとおり、6つの記事に分割して掲載しております。ぜひ、ご覧ください。(本記事は①となります)

【記録① 全景〜水切落】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-

【記録② 山】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-

【記録③ 村】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-

【記録④ 人】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-

【記録⑤ なりわい】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として

【記録⑥ 手代木さんのこと 〜 感想】展覧会 黒川郡大和町升沢のくらし 〈なりわい〉が結ぶ山・村・人 -移転集落の風景を記憶の窓として-